★★★☆☆
あらすじ
出所したての主人公は、ふとしたきっかけであるヤクザの男と兄弟の契りを交わすが、彼の所属する組織と揉め事を起こしてしまう。「現代やくざ」シリーズ第一作目。
感想
主演の菅原文太がギラギラした存在感を放っている。晩年の彼の無駄に重苦しい演技は好きではなかったが、この若い頃の、あまり関わり合いたくないような尖った感じは良い。若いと言ってもこの時は既に30代半ばなのだが。逆にその年齢でまだこれだけ角が取れていないのはすごいと言えるのかもしれない。
そして彼の弟分を山城新伍、さらにその弟分を小林稔侍と石橋蓮司が演じているのもなかなかすごい。特に小林稔侍と石橋蓮司の二人が下っ端の若いチンピラを演じているところに時代を感じる。それからこの二人が同年代というのもちょっと驚いた。石橋蓮司はもうちょっと若いのかと思っていたが、小林稔侍とほぼ同じで現在80代だ。それで今でも普通にちょくちょく映画やドラマで見かけるくらいに活躍しているわけだからすごい。
物語は、主人公の菅原文太演じる与太者と待田京介演じるヤクザの男の間に生まれた絆やしがらみが中心に描かれていく。二人が絆を深めていく過程は、互いに男らしさをアピールし合っているような求愛行動ぽさもあり、ちょっと面白かった。そんなにイチャイチャするならもう付きあっちゃえばいいじゃん、と言いたくなる瞬間が何度かあった。
やがて若山富三郎演じる昔ながらの任侠を重んじる男も登場し、当世風のドライな風潮になじめない昔気質の男たちのそれぞれの生き様が映し出されていく。それぞれに見せ場があり、主人公が一人で組織に乗り込むクライマックスも高揚感があった。徐々に気分を盛り上げてくれる。
映像的にも見どころがある。弟分を殺されて怒りがマックスに達した時の主人公の青白く浮かび上がる顔は怖いくらいで迫力があったし、時おりの手持ちカメラの揺れる映像も臨場感があった。
ただ皆が美学だけをあまりにも重んじすぎているのがどうにも引っ掛かる。最初から主人公は愚直過ぎだし、最後も無鉄砲過ぎた。打つ手がないくらいに追い詰められたのなら仕方がないが、そうでないならヤケクソでなく、ちゃんと相手を倒す算段をするべきだろう。それをせずに美学のために闇雲に突っ込んでいくなんて、ただ死にたいだけの、カルトぽさがあってちょっと理解しがたかった。
これをサムライ的で日本人の美点だと考える人もいるのだろうが、無謀であろうと勇敢に戦いを挑み、美しく散ることは尊い、みたいな考え方は、個人的には一番日本人の駄目な所に思えてしまう。
スタッフ/キャスト
監督
出演 菅原文太/待田京介/志村喬/山城新伍/八名信夫/室田日出男/小林稔侍/石橋蓮司/藤純子/若山富三郎
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