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「ブルーベルベット」 1986

ブルーベルベット (オリジナル無修正版) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★★☆☆

 

あらすじ

 父親の入院をきっかけに故郷に戻ってきた大学生の男は、見舞いの帰り道で切断された耳を発見する。

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感想

 主人公が切断された耳を発見し、好奇心から事件に首を突っ込んだことから、異常な世界に引き込まれていく物語だ。

 

 ただ主人公にも最初からおかしなところがあった。野原で切断された片耳が落ちているのを発見したら、普通は警察に通報するだけだが、彼はそれを拾って袋に入れ、わざわざ警察に持っていく。虫が群がる人間の断片を素手で触るなんて気色が悪くて自分にはとても無理だが、主人公は平気でそれが出来てしまうわけだから、元々彼は異常な世界との親和性が高かったと言える。

 

 

 それに、事件に対する好奇心とはいえ、法を犯してまでグイグイと勝手な捜査にのめり込んでいく姿も常軌を逸していた。事件との関係が疑われる女の家に忍び込み、その生活を覗き見る。

 

 ここまでは主人公の好奇心が暴走しているだけの印象だったが、女にその存在がバレて、脅されて関係を迫られるようになってからはその様相が変わる。ここからは逆に異常な世界に飲み込まれていく。

 

 この異常な世界を代表するのが、犯人と思しき男だ。この男を演じるデニス・ホッパーの存在感が凄かった。目はギラつき、支離滅裂な言動で、危険な雰囲気をプンプンと漂わせている。彼の出演する映画はいくつか見てきたはずだが、こんなに凄みがあったっけ?と思ってしまうほどの怪演だった。

 

 後半は、デビッド・リンチ監督らしい妖しくも分かりづらい演出が増えてくる。だがよく分からないなりにも、その奇妙な世界観を楽しめた。中でもロイ・オービソンの「In Dreams」の口パクをするシーンはグッと来る。奇妙で惹きつけられるシーンだ。

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 事件を解決して主人公が日常を取り戻し、エンディングを迎える。しかしこれまでと違うのは、何気ない日常と異常な世界は正反対のものではなく、隣りあわせのものだと理解していることだろう。隣りあわせというよりは同居していると言った方がより正確かもしれない。平和で心和む芝生の庭も、よく目を凝らせば醜く虫が蠢いているし、愛の象徴であるコマドリだって不気味な昆虫を食べている。ラストで、眉を顰める家族とは対照的に、そんなコマドリを穏やかに眺める主人公と恋人の姿が心に残った。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 デヴィッド・リンチ

 

出演 カイル・マクラクラン/イザベラ・ロッセリーニ/デニス・ホッパー/ローラ・ダーン/ジョージ・ディッカーソン/ディーン・ストックウェル/ホープ・ラング

 

音楽 アンジェロ・バダラメンティ

 

ブルーベルベット

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ブルーベルベット - Wikipedia

 

 

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