★★★☆☆
あらすじ
引退してヴェネツィアで暮らしていた名探偵ポワロは、友人の女流作家に誘われ、娘を失ったオペラ歌手が霊媒師を招く降霊会に参加する。
シリーズ第3作。原題は「A Haunting in Venice」。103分。
感想
ハロウィンの夜に起きた殺人事件が描かれる。主人公ポワロが霊媒師の嘘を暴くために降霊会に参加したところ、そこで事件が起きる。するすると本題に入っていく流れは巧みだったが、あまりにスムーズ過ぎて、見る側の心の準備が間に合っていない感じはあった。
さらに主人公はじめ登場人物たちは皆早口で展開も早く、どこか忙しなくて居心地の悪さがある。あまり明確な状況の説明はなく、事件後の主人公の捜査も関係者に聞き取りを行うのみで淡白だ。関係者が疑心暗鬼でやり取りするようなこともなくて、誰が犯人かと謎解きを楽しむような雰囲気にはなっていない。
その代わりに描かれるのは、幽霊や呪いといった超自然的なホラーだ。ハロウィン、嵐の夜、古ぼけた洋館、霊媒師、忌まわしい伝説など、いかにもな状況が揃っている。突然シャンデリアが落下したり、大きな音で電話が鳴ったりと、ビクりとさせられるシーンも多い。ミステリーよりもスリラーとして楽しむ映画だ。皆が早口でどこか落ち着かない雰囲気になっていたのも、その効果を狙ったものだったのだろう。
クライマックスで謎解きがされてみれば、すべてが理にかなったことで、主人公が見た不思議な現象にもちゃんと説明がつくことが分かる。超常現象で片づけてしまわないのは好感が持てる。てっきり霊媒師との対決になるのかと思ったらそうはならない意外な展開も面白い。よく出来ているとは思うが、残念ながらあまり自分の好きなテイストではなかった。
ただ、名探偵ものはシリーズ化されるとマンネリ化しがちなので、いろんな路線をやってみるのは大事なことなのかもしれない。金田一耕助ものみたいで、きっとこのテイストが好きな人も多いはずだ。
スタッフ/キャスト
監督/製作/出演 ケネス・ブラナー
原作 ハロウィーン・パーティ〔新訳版〕 エルキュール・ポアロ (クリスティー文庫)
製作
ケヴィン・J・ウォルシュ/ジュディ・ホフランド
出演 カイル・アレン/カミーユ・コッタン/ジェイミー・ドーナン/ティナ・フェイ/ジュード・ヒル/アリ・カーン/エマ・レアード/ケリー・ライリー/リッカルド・スカマルチョ/ミシェル・ヨー
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前作 シリーズ第2作