★★★★☆
あらすじ
麻薬カルテルのリーダーの捜査に参加することになったFBI捜査官の女性。
原題は「Sicario」。
感想
冒頭からなかなかの激しい描写で、麻薬カルテルとの戦いがどういうものかを叩きこまれるようなスタートだった。そしてその事件を担当していた主人公のFBI捜査官の女性は、麻薬カルテルのリーダーを捜査するチームに加わることになる。
そもそもこのチームのメンバーたちが怪しげだ。どこの所属の人間かすらも明確に示さないような人たちだ。そしてやっていることも滅茶苦茶で、いきなり国境を越えてメキシコへと入っていく。違法な事ばかりで動揺する主人公だが、その一方で現地で拷問され吊るされた人々など、麻薬をめぐる人々の惨状を目の当たりにすることになる。
しかし、拷問の上殺害して見せしめのために吊るすとか、本人だけでなくその家族にまで酷いことをするこの組織の残忍さは何なのだろう。反社会組織は世界中に存在するが、必ずしも皆こんな風に残忍なわけではない。日本だったら任侠の世界でそれなりの不文律がある。必ずしもいつも守られるわけではないが、それで一定の秩序が保たれている。
これはきっとアメリカの麻薬市場のパイの大きさが関係しているのだろう。それだけの事をしてでも取りたい市場というか、リターンの大きさが半端ないので費用対効果として相応、という判断になるのかもしれない。そこで得た大金で警察を買収し、武器を揃えて軍隊のような組織を作ることも出来る。
捜査する側が、対応するにはもはや普通の捜査方法では埒が明かない、と考えるのもよく分かる。主人公が加わったチームの行動はもはや軍隊だった。目的も犯人を逮捕するのではなく、囮を使って陽動作戦をしたり、内紛を引き起こさせたり。超法規的措置ばかりのチームに批判的な主人公もどんどんと巻き込まれていってしまう。
麻薬カルテルのえげつなさに気を取られてしまうが、主人公の巻き込まれていく過程や、捜査が進展していく様子が非常に丁寧に描かれていてストレスがないのがいい。ゴムバンドのくだりは、あれ?これってどこかで見たぞ、と自然と違和感を感じる見せ方になっていて、うまいなと感心させられる。
主人公の正義感と現実との整合性が取れずに戸惑う姿や、ジョシュ・ブローリン演じるチームリーダーの不敵な様子など、登場人物たちがしっかりと描かれていて皆が魅力的だ。そんな中でも終盤にいくほど増してくるベニチオ・デル・トロの存在感がすごかった。覇気に満ちているわけではなく、くたびれた雰囲気がありながらも、それでも必ずやり遂げる意志の強さが感じられる。あの顔だからそう見えるところもあると思うが、ほぼ主役の活躍ぶりだった。
反社会組織というものは大体どこにでもいるので、あきらめて扱いやすい組織と付き合っていくという方針にした方が良いのかなと思ってしまった。意気込んで追放しよう追い込むと、それよりえげつない集団がやって来るだけだし、万が一、彼らを一掃できたとしたら、それまで組織がやってきた役割をやるのは警察などの公的機関のはずで、それもまた地獄だ。
スタッフ/キャスト
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本 テイラー・シェリダン
製作 ベイジル・イヴァニク/エドワード・L・マクドネル/モリー・スミス/サッド・ラッキンビル/トレント・ラッキンビル
出演 エミリー・ブラント/ベニチオ・デル・トロ/ジョシュ・ブローリン/ダニエル・カルーヤ/ジョン・バーンサル/ジェフリー・ドノヴァン/ヴィクター・ガーバー/マキシミリアーノ・ヘルナンデス
音楽 ヨハン・ヨハンソン
ボーダーライン (2015年の映画) - Wikipedia
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