★★★★☆
あらすじ
おとり捜査で麻薬の密売人に仕立て上げられた息子の罪を司法取引で軽減させるため、麻薬組織に近づく主人公。実話を基にした物語。
感想
使いようによってはとても有効である司法取引や密告制度、おとり捜査の負の部分を描いた作品。そもそも、主人公の息子が逮捕されたのは、司法取引によって自らの罪を軽くしようとする友人が、彼を犯罪者に仕立て上げ、密告したからだった。だけどきっと司法取引がなければその友人は友達を売ったりしなかっただろうし、主人公の息子も誘いがなければ乗らなかっただろう。つまりこれらの制度のせいで、本来起きなかったはずの犯罪が起きてしまっている。
そして主人公も、息子を救いたいがために、息子に友達の誰かを犯罪者に仕立て上げ売るように唆す。父親が息子にそんなことをする時点でかなりのモラルハザードだが、モラルに反するときっぱりと断る息子。すると今度は父親自身が誰かを密告しようと麻薬の密売人に近づこうとする。しかも更生して真面目に働こうとしている元犯罪者の従業員を巻き込んで。ここでもまた一つの犯罪が起きようとしてしまっているし、足を洗おうとしていた人間をまた犯罪の世界に舞い戻らせてしまっている。泥沼のようにどんどんと悪い連鎖が続いていく。
ずっと嫌な現実を見せつけられて、段々と欝な気分になってしまうのだが、それでも最終的には麻薬組織のトップを逮捕できたわけだから、単純に酷い制度だと非難することも出来ない。清濁併せ呑むというが、麻薬組織に大きな打撃を与えられるのなら、多少この制度による犠牲者が出ても仕方がないという事なのだろう。合理的と言えば合理的だ。雰囲気でやってないからまだましだと思うべきか。きっと彼らなら、もっとましで効果的な方法が見つかれば、合理的に判断してさっさっと新しい制度に切り替えるはずだ。これまでのやり方を変えるわけにはいかないとか、前例がないとか、雰囲気だけの非合理的な事は言わないだろう。
ドウェイン・ジョンソンが主演。だがほとんど目立ったアクションもなく、相手方の麻薬組織のボスも大暴れすることなくおとなしく逮捕されたりして、派手な映画を期待していたのだとしたら物足りなく感じるであろうシリアスな内容になっている。でもそれは実話を基にしているわけだから仕方がない。普通の会社社長が突然、息子を助けるために敵をバッタバッタと倒しまくったり、二丁拳銃で撃ちまくったりしたら、リアリティがない、映画じゃないんだから、と言われてしまうはず。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 リック・ローマン・ウォー
脚本 ジャスティン・ヘイス
製作/出演 ドウェイン・ジョンソン
出演 バリー・ペッパー/スーザン・サランドン/ベンジャミン・ブラット/ジョン・バーンサル/マイケル・K・ウィリアムズ/メリーナ・カナカレデス/ナディーン・ヴェラスケス/デヴィッド・ハーバー/ハロルド・ペリノー
オーバードライヴ (2013年の映画) - Wikipedia