★★★☆☆
あらすじ
カリフォルニアで技術力を武器に大麻ビジネスで成功を収めていた二人組だったが、メキシコの麻薬カルテルに共通の恋人を拉致され、脅迫されるようになる。
感想
マリファナビジネスを展開する二人組が、進出してきた麻薬カルテルに脅迫されながらも形勢逆転を図る物語だ。この二人が、高い技術力で品質の良い大麻を作って支持を集め、暴力や揉め事は極力忌避し、儲けは後進国での慈善活動に使うビジネススタイルを取っている。イメージするような麻薬組織とは全然違っていて新鮮だった。
きっと世の大麻解禁を訴える人たちがイメージしているのはこちらの姿なのだろう。公的になれば完全に暴力は排除できるはずだ。逆に強い拒絶反応を示している人たちは、おそらく旧来の麻薬カルテルが跋扈するような古い世界を想像しているのだろう。そこに両者の埋まらない溝が生じてしまっているのかもしれない。日本の場合は、あまりにも大麻や覚せい剤と縁がなさ過ぎて、ほとんどの人が初歩的な知識すら持っておらず、ステレオタイプでしか考えられない人が多いのも大きいような気がする。
そして、二人に共通の恋人がいることもさらっと描かれていて、世の中の変化を実感する。かつては声高に主張しなければいけなかった事も、時代が変われば説明する必要すらなくなっていく。彼らが、築き上げてきたビジネスモデルを麻薬カルテルにそっくりそのまま引き渡し、あっさりと手を引こうとしていたのもなかなか理解しがたい感覚だった。
しかしそんなおいしい提案を拒絶する麻薬カルテル側もすごい。彼らの目当ては主人公らの高い技術力で、その交渉もまるで普通のビジネスと何ら変わらなくて面白かった。技術者が残ることを条件にした企業買収の話みたいになっている。だがそこは裏社会のことなので、約束履行の担保は契約書ではなく人質だ。共通の恋人が拉致され、主人公らは彼らのいう事を強制的に聞かざるを得なくなる。
この苦境の中でなんとか挽回しようとする二人の姿が見どころだが、色々と解せない部分は多かった。特に拉致の実行部隊のリーダーとは直接会ったりしていたのだから、彼の身辺を調べて脅すとか、あとをつけて恋人が監禁されている場所を特定するとかすればいいのにと思ってしまった。その弱点さえなくなれば、当初の予定通りにビジネスから手を引いて雲隠れすことだってできた。それをせず、遠回りなことばかりをしているうちに、クリーンだった彼らが、麻薬カルテルの残虐な手口と変わらないことをやるようになってしまった。
ラストの人質交換シーンも、十分に準備の時間があったのだからもっとセーフティにやれただろうと思っていたら、やり直しがあって少しはまともになった。だがこの演出自体に古臭さを感じてしまった。しかも結局、腑に落ちない結末には変わりない。全体的になんとも締まらない印象の映画になってしまっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 オリバー・ストーン
脚本 ドン・ウィンズロウ/シェーン・サレルノ
出演 テイラー・キッチュ/アーロン・テイラー=ジョンソン/ブレイク・ライヴリー/ジョン・トラボルタ/ベニチオ・デル・トロ/サルマ・ハエック/デミアン・ビチル/エミール・ハーシュ/シェー・ウィガム/ジョエル・ムーア/ホアキン・コシオ