★★★★☆
あらすじ
80年代、巨大な麻薬カルテルの全容を探るために潜入した捜査官。
実話を基にした物語。
感想
マネーロンダリングを請け負う名目で、麻薬カルテルに近づいた主人公ら潜入捜査官たち。そもそもマネーロンダリングの仕組みが分かりづらいし、相手は巨大組織で登場人物も多く、正直、具体的に何をやっているのかは大まかにしか理解できなかった。土地柄なのか、時代のせいなのか、みんな髭面のグラサン姿で誰が誰やら分かりにくいのも分かりづらさに拍車をかける。
だが物語自体は面白い。なるべく相手組織の中枢に近づかないといけないが、かといってバレるわけにもいかない状況で、細心の注意を払いながらチャンスと見れば必死に食らいついていく姿には、ハラハラドキドキさせられた。疑われそうな場面に出くわしても、内心ではバレたかもと焦りながら、それでも平常心を装い続ける。終始、緊張感のある展開で、2時間を超える映画だが全く時間が気にならなかった。劇中で使われている音楽も良い。
そして、そんな主人公のまわりの登場人物たちも皆いいキャラクターだった。ジョン・レグイザモ演じる相棒の潜入捜査は、いかにもその筋にいそうな風貌や言動ながら常に冷静に状況を見極めているし、ダイアン・クルーガー演じる婚約者役も、華やかでありながら大胆に相手の懐に飛び込んでいく。そし、ベンジャミン・ブラッド演じるカルテル幹部は、犯罪者なのに家族や友人を大事にするナイスガイだ。彼らのキャラクターが映画を盛り上げてくれる。
潜入捜査は細かい部分では色々と冷や冷やとするシーンがあったが、全体としては順調すぎたかなという気もする。だが、実話を基にしているので実際にそうだったのだろう。それから、バレれば家族は皆殺しとか言われていたのに、主人公は毎日仕事が終われば隠れることなく堂々と家に帰って家族と過ごしていて、危険じゃないの?とヤキモキしてしまった。だがこれも当時はそうだったという事なのだろうか。
最後は、嘘の結婚式で皆を集めて一気に組織を一網打尽、というのがいかにもアメリカらしい。派手だが、合理的でもある。犯罪者とはいえ、今まで彼らを騙していたという後ろめたさを感じさせるビターさもあって、深みのある結末だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ブラッド・ファーマン
脚本 エレン・ブラウン・ファーマン
原作 The Infiltrator: The True Story of One Man Against the Biggest Drug Cartel in History
製作総指揮 マーティン・ラシュトン=ターナー/キャメラ・ガラーノ/ピーター・ハンプデン/ノーマン・メリー/ロバート・メイザー
製作総指揮/出演 ブライアン・クランストン
出演 ダイアン・クルーガー/ベンジャミン・ブラット/ジョン・レグイザモ/ユル・ヴァスケス/ジュリエット・オーブリー/エイミー・ライアン/オリンピア・デュカキス/ジョー・ギルガン/サイード・タグマウイ/エレナ・アナヤ/ジェイソン・アイザックス/マイケル・パレ
音楽 クリス・ハジアン
撮影 ジョシュア・リース