★★★★☆
あらすじ
知らない人たちへの尾行をくり返していた作家志望の男は、ある日突然尾行対象の男に話しかけられる。
クリストファー・ノーラン監督のデビュー作。69分。
感想
尾行を趣味にする作家志望の男が、尾行相手に気付かれてしまい、話しかけられたことから始まる物語だ。
時系列をシャッフルした構成で、監督のクリストファー・ノーランの作風がデビュー時からすでに固まっていたことがよく分かる。しかも余計な説明をしなくても主人公の髪型や服装、ケガの有無などでどの時点の話なのかが分かるようになっていて、最初からかなり洗練されている。
主人公の尾行に気付いて話しかけた男は、一風変わった空き巣だった。彼に誘われ仕事に同行した主人公は、侵入した家で住人の思い出を刺激したり、同居人同士の不和を招くような細工をする男の行動に興味を抱く。尾行を趣味にする者と奇妙な空き巣との邂逅は、どこか江戸川乱歩の怪奇小説や安部公房の不条理小説を思い起こさせる。
だがその後の展開はヒッチコック的だ。ともに行動するようになった二人だが、それぞれが互いに秘密の行動を取っていることが明らかになっていく。それらがどのようにつながり、どんな結末を迎えるのだろうかと惹きつけられる。
最終的には空き巣の男に関する驚きの真相が明らかになるのだが、最初から彼には何者なのか分からない得体の知れなさがあったからなと、少し物足りなく感じるところがないわけでもなかった。だがよく考えると空き巣の男は、最初以外は実は本当の意味での空き巣をしていなかったのかとか、振り返ると色々な気付きがあって、長く余韻を楽しめる映画となっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/撮影/編集
出演 ジェレミー・セオボルド/アレックス・ハウ/ルーシー・ラッセル/ジョン・ノーラン/ディック・ブラッドセル