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「ブルータル・ジャスティス」 2019

ブルータル・ジャスティス(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 乱暴な仕事ぶりを市民に告発されてしまった刑事は、停職処分中に相棒と共に犯罪者から金品を奪うことを計画する。原題は「Dragged Across Concrete」。159分。

 

感想

 真面目に職務をこなしていただけなのに、市民の隠し撮り映像がきっかけで世間に非難され、停職処分を受けてしまった刑事が主人公だ。たまたまラテン系だった犯罪者に少し荒っぽいことをしただけで人権侵害だ、人種差別だと騒がれてしまうことに対する憤りが感じられるが、この他にも行き過ぎたポリコレに対する反感など、保守層が感じていそうな世の中に対する憤懣が随所に見られる。

 

 ただ、それを映画のメインのテーマにしているわけではなく、あくまでもエッセンスのひとつとして扱っているだけなのは好感が持てる。プロパガンダ臭がすごいとうんざりしてしまうが、作者の思いが滲み出てしまっただけなら仕方がない。それは当たり前のことだろう。

 

 しかし、リベラルなつもりでいたのにいつの間にか人種差別主義者になってしまった、と嘆く主人公の妻の言葉には、アメリカの闇を感じてしまった。日本も似たようなものだが。今は、昔なら世間体を気にして言えなかったような本音をぶっちゃけると喝采が送られる時代だ。良くも悪くもマイノリティが団結しやすくなった。

 

 

 登場人物たちはあまり感情を露わにせず、淡々と物語は進行する。銃撃戦もあるが、描写自体は物静かだ。派手ではないのだが、だがこの静けさが良い。きっと現実でも犯行時に感情表現豊かに派手に動き回る犯罪者なんてそうはいないはずで、リアリティがある。しんしんと降り積もる雪をいつまでも眺めていられるように、淡々と進むこの物語もなぜか飽きることなく見ていられる。

 

 そして物静かな中に、たくさんのジョークが散りばめられている。爆笑を誘うようなものではなく、クスっとするようなオフビートな笑いだ。主人公と相棒の間で交わされるとぼけた会話も面白い。互いにボケたりツッコんだりするわけではなく、至って生真面目な顔をしているのが可笑しい。

 

 また、グロテスクな描写やメンタルをやられるシーンがいくつかあるのだが、これらはなんとなく監督のサービス精神から来ているような気がした。会話をしていると場を盛り上げようとついつい話を盛ってしまいたくなるものだが、きっとそんな感覚でこれらのシーンをやっている。犯人らが遺体から内臓を引っ張り出すシーンでは、そのシーン必要?と思わず笑ってしまった。面白い無駄話をしているような雰囲気は、タランティーノ作品と似ているかもしれない。

 

 話を盛り過ぎて上映時間が2時間半以上になってしまっているのは流石に長過ぎだと感じたが、それでも時間に余裕がある時に見るならしっかりと楽しませてくれる映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/音楽 S・クレイグ・ザラー

 

出演 メル・ギブソン/ヴィンス・ヴォーン/トリー・キトルズ/トーマス・クレッチマン/ドン・ジョンソン/マイケル・ジェイ・ホワイト/ジェニファー・カーペンター/ウド・キア/ローリー・ホールデン/フレッド・メラメッド /ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ/ノエル・グーリーエミー

 

音楽 ジェフ・ヘリオット

 

ブルータル・ジャスティス - Wikipedia

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