★★★☆☆
あらすじ
特定の席に座ると、コーヒーが冷めるまでの間タイムスリップできる喫茶店に、様々な思いを抱えた客がやってくる。
有村架純主演、薬師丸ひろ子、石田ゆり子らが出演。川口俊和の舞台を元にした小説が原作で、塚原あゆ子監督。116分。
感想
コーヒーが冷めるまでの短い間、タイムスリップできる喫茶店が舞台だ。そこで何をしても過去を変えることは出来ない設定なのだが、それでもタイムスリップする人たちのエピソードが描かれていく。
ちなみにタイムスリップの際、コーヒーの蒸気が天井で水滴となり、それがカップの中に落ちる。普通じゃない出来事が起きることを示すための演出ではあるが、なんだか衛生的に気持ち悪くて気になってしまう。
タイムスリップした人たちは、過去は変えられないが、未来を変えることはできると気付き、前向きな気持ちになって戻ってくる。
その中では、二人目にタイムスリップした認知症の妻を持つ男のエピソードは心に残った。忘れられたと認めることが怖くて接し方を変えていたのだが、まだ妻の記憶が確かだった過去にタイムスリップし、彼女と話し合ったことで新たな気持ちを手に入れて戻ってくる。
この時の妻が、自分が認知症で、やがて夫のことを忘れてしまうだろうことを知っており、今話している相手が未来からやって来た夫であることも分かっているのがいい。感動を前面に押し出した映画で、その時点で萎えてしまうところがあったが、それでもこの長年連れ添った夫婦ならではのやりとりには泣かされた。
だがそこが映画のピークだった。その後はいい話の押し売り感が強くなる。最後に主人公のエピソードとなるのは物語の構成的には巧みだが、泣かせようと必死で演出がしつこい。やればやるほど冷めてしまった。
そして伊藤健太郎演じる主人公の相手役がなんだか気持ち悪い。初回はともかく、その後は主人公目当てで店に通っていたのかと思うと印象が変わる。別によくある話ではあるが、それなら彼女に好意を持っている描写が欲しかった。急に恋愛話になるのは違和感があった。
それから子供が出来るのも早過ぎだ。引いてしまった。
最後に「*個人の感想です」みたいな感じで、タイムスリップ体験者たちが使用感を語るのも蛇足だった。そこまでして感動させたいのか、ノルマでもあるのか?と疑ってしまう。
またエンドロール後のくだりも、過去も未来もどうせ変わらないのなら、もうやる必要はないのでは?と思ってしまった。
泣ける話を積極的に摂取したい人であれば、きっと楽しめるはずの映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 塚原あゆ子
脚本 奥寺佐渡子
原作 「コーヒーが冷めないうちに」「この嘘がばれないうちに」
出演 有村架純/伊藤健太郎/波瑠/林遣都/深水元基/松本若菜/吉田羊/松重豊/石田ゆり子
編集 宮島竜治

