★★★☆☆
あらすじ
何らかの事件を起こすも逃走手段を失った三人の若者は、空き家となっていた元雑貨店で朝まで待機することにする。
感想
事件後、朝まで潜伏することになった空き家で、若者たちが不思議な体験をする物語。ただ序盤は、そんなことよりも彼らが何をやったかの方が気になり、のんきに手紙の返信を書いたりしている若者たちにイライラしてしまった。朝が来るまでやることもなく、ただじっとしていても暇だからこの不思議な手紙に返信でも書くか、みたいな演出をしっかりやって欲しかった。それがないものだから、まだ事件の最中なのにそれをすっかり忘れて、別のことに関心が移ってしまったサイコパスな人間たちに見えてしまった。
そして次第に分かってくるのは、この映画は過去と未来を手紙が行き来する文通映画だという事だ。過去に投函された手紙に関するエピソードが次々と描かれていく。最終的には彼らの起こした事件につながっていくのだろうとは予想出来るのだが、手紙が投函されたら新たなエピソードが始まる流れは、話の前後のつながりが弱く、物語に推進力がない。次に何が起きるのか、前のめりでハラハラしながら見守るというよりは、冷めた心で起きていることをただ眺めているだけだった。散発的なエピソードを見せられ続けるだけなので、だから何?と思ってしまいそうになる自分がいた。
それから紹介されるエピソードでは手紙周辺のことしか描かないので、大して登場人物たちに感情移入が出来ないのも、話に興味が湧かない原因となっていた。しっかりと描いていたのは、尾野真千子演じる女性ぐらいだった。彼女の手紙に返信をしたのは主人公。せっせと返信を書く仲間たちを批判的に見ていた主人公がキレて、「次は俺が書いてやるよ」と書いた手紙なのに、めちゃくちゃ親身で的確なアドバイスを送っていたのには笑ってしまった。汚い言葉で暴言をまき散らすのかと思っていたのに、めちゃくちゃ真面目だった。
散らばったピースが集まって一つになり、全体像が見えてくると、なるほど面白いなとは思ったが、ピースの散らかし方がマズくて、それを集める過程を眺めているのはかなりしんどかった。それによく考えると、つながりがつながりを生んで彼らの現在につながったのではなく、ただ関係が深かったのが分かった、というだけの話なので、そんなに感慨は湧かなかった。ラストは、主人公たちが明るい未来を予感しながら駆け出すシーンで終わったのだが、正直、彼女に駆け寄った後に何をすればハッピーな展開になるのか、全く想像ができなかった。でもバックで流れている山下達郎の曲に聞き惚れてしまっていたら、もうどうでもいいような気分になってしまった。
スタッフ/キャスト
監督 廣木隆一
出演 山田涼介
尾野真千子/村上虹郎/寛一郎/林遣都/成海璃子/門脇麦/萩原聖人/PANTA/小林薫/根岸季衣/菜葉菜/山下リオ/吉行和子/手塚とおる
音楽 Rayons
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