★★★☆☆
あらすじ
江戸城明け渡し直前の幕末にタイムスリップしてきた女教師と生徒三人。
感想
自分たちがタイムスリップしてきたことで歴史が変わるかもしれないことを知り、史実通りに戻そうと奮闘するという、ある意味で清く正しい正統派のタイムスリップもの。なのだが、タイムスリップする経緯だとか、元の時代に戻る方法、当事者たちの受け止め方など、もろもろがかなり雑。あまりタイムスリップ自体には細かく突っ込んでもらいたくはなさそうな雰囲気が出ている。
ただ同じ瞬間にタイムスリップした登場人物たちが、幕末の同じ日時にやってきたのではなく、ばらつきがあるのは面白い。石原さとみが演じる女教師がタイムスリップして慌てている時に、千葉雄大演じる生徒はその一年前にやって来ていて、すでにその時代に順応している。なので同じ現代からやって来たのに、皆の心が一つではなかったりする。
この映画は元々はテレビドラマだったということで、登場人物の説明が足りないのは、テレビドラマですでに説明済みだからと思っていたのだが、ドラマの放送は1994年。ドラマと映画で直接の関連性はなく、ただこのドラマから着想を得ているというだけのようだ。それにしては1クール、ドラマをやった後の映画のように、色んな要素が詰め込まれている。詰め込みすぎてうまく消化できてない印象。
あまり深みがなく、上滑りをしているような展開の物語が続く。これもいろいろ詰め込みすぎている弊害なのだが、なぜかクライマックスで玉木宏演じる勝海舟のチャンバラだけはたっぷりの尺で展開される。これが猛烈にだるかった。取り立てて真新しい斬新なカットがあるわけでなく、ただただダラダラとチャンバラシーンが続く。しかも、日本人同士で戦っている場合じゃない、と言っておきながらの、日本人同士の戦い。そこは言葉だけでおさめて欲しかった。
史実とは違うが、江戸城の無血開城へ至る経緯を描いた歴史ものといえる。文句を言いながらもなんだかんだで見てしまう大河ドラマのように、自分の歴史の知識を確認するような感覚で映画を見ていた。正しい歴史の知識を身に着けようというメッセージが込められているようにも感じた。
スタッフ/キャスト
監督 李闘士男
原案 思いあがりの夏 (角川文庫 緑 357-10)所収「名残の雪」
出演 玉木宏/石原さとみ/柄本時生/川口春奈/千葉雄大/谷村美月/吉田羊/渡辺邦斗/隆大介/山崎銀之丞/嶋田久作/伊武雅刀/石橋蓮司
音楽 服部隆之
編集 宮島竜治