★★★★☆
あらすじ
戦国時代にタイムスリップしてしまった自衛隊隊員たち。
感想
自衛隊がタイムスリップしてしまう描写が、アナログ感はあるのだが意外と説得力があった。CGを使ってスマートに表現したものよりも、この時代ぐらいの、今ある技術でなんとかそう見えるようにしようと必死に工夫しているものの方が伝わってくる。なぜタイムスリップしてしまったのかについては、何の説明もないのだが。
それから自衛隊の隊員たちが、初めて戦国時代の武士集団と相対したときの、未開部族と出会った感も良かった。日本の歴史では大航海時代の欧州のような異文化との衝突というのはあまりないが、こういう設定であればネイティブアメリカンと戦うオールドスタイルの西部劇のようなことも出来る。やり方次第で何でもできてしまうのがSFの良い所だ。
自分たちは存分に戦えないとか、軍隊なのに実戦経験がないとか、どこか自嘲気味な隊員たちの会話は、最近はあまり聞かれなくなった自衛隊に対する世間の様々な意見を思い出させた。そして自衛隊も今ではすっかり既成事実化したのだなと、時を重ねてきた事の重みを感じる。彼らが交わしたナイーブな会話の中身のような事が、今でもある種の人々のコンプレックスを刺激し続けているという事なのだろう。
そう考えると、映画の序盤は、近代兵器を持った自衛隊が圧勝するところを見たかったのにそんな描写がなかったのは、もしかしたら当時の雰囲気では自衛隊が無双してしまうとそれはそれで都合が悪かったのかもしれない、などと穿った見方をしてしまった。
主演の千葉真一が狂気に陥っていく様子だとか、戦国武将を演じる夏木勲の曲者感だとか、メインの二人が熱演している。真田広之らのスター達もわずかな出演シーンで印象的な仕事をしている。中でもワンシーンだけ意外なところで登場した薬師丸ひろ子は可愛らしかった。そして、自衛隊の隊員たちの多くをなぜか、かまやつひろしらミュージシャン達が演じているという不思議なキャスティングだった。
ストーリーは、内輪もめだったり、夜這いだったり、千葉真一と夏木勲のイチャイチャシーンだったりと、色々詰め込まれていて散漫な感じはある。だが、今の大作映画にありがちな客が喜びそうなシーンをとりあえず入れておくというよりは、製作者が撮りたいシーンを撮っているのだというのが伝わり、好感が持てた。映画への熱を感じる。
ラストもタイムスリップものの最後は元の時代に戻るものだ、という思い込みを打ち破るような展開で趣があり、面白かった。
スタッフ/キャスト
監督 斎藤光正
脚本 鎌田敏夫
製作/出演 角川春樹
出演 千葉真一/夏木勲/速水亮/にしきのあきら/三浦洋一/かまやつひろし/高橋研/渡瀬恒彦/江藤潤/角野卓造/鈴木ヒロミツ/竜雷太/三上真一郎/小野みゆき/岡田奈々/絵沢萌子/岸田森/成田三樹夫/仲谷昇/小池朝雄/真田広之/佐藤蛾次郎/宇崎竜童/勝野洋/草刈正雄
音楽 羽田健太郎
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