★★★★☆
あらすじ
第一次世界大戦中、オーストラリアも参加したトルコ・ガルポリの戦いで三人の息子を失った父親は、子どもたちを埋葬するために現地に向かう。
ラッセル・クロウ監督・主演、オルガ・キュリレンコら出演。原題は「The Water Diviner」。111分。
感想
トルコでの戦いで息子三人を失い、その心労で妻をも失ったオーストラリアの男が主人公だ。妻の願いだった息子たちを連れ帰るため、トルコに向かう。
しかし、オーストラリアがトルコで戦争していたなんて知らなかった。一瞬なんで?と思ったが、連合国の一員としてということなのだろう。戦力を持っていると、わざわざ見知らぬ異国の地まで出かけていって戦うハメになる。
トルコに到着した主人公は定宿になったホテルの人々と交流しつつ、なんとか子どもたちが死んだ戦場に向かう算段を取り付ける。とはいえ戦場は広く、戦死者はたくさんいる。そんな中で子どもたちの死に場所を探すなんて無理だろうと思ってしまうが、序盤に主人公が水脈を探し当てることができたこと、子どもたちが仲良く、常に助け合って一緒にいたことから、ありえないことではないような気がしてくるから巧い伏線だった。
そこで主人公は思わぬ情報を入手し、さらに捜索を続けることになる。ここで連合国側ではなく、敵だったトルコ側の人々が様々な協力をしてくれるのが良い。敵国としては快く思っていないが、彼らにも戦死した子供を思う気持ちは痛いほどよく分かる。だから主人公の熱意にほだされてしまう。一瞬ではあったが、狭い貨車の中で主人公と彼らがクリケットに興じるシーンは心温まるものだった。
子どもたちの遺品を見つけるだけでなくそれ以上のことがあったり、さらには現地の女性とくっついたりまでして、ちょっと話が出来すぎな気がするが、プロットがよくできているのでそれなりの説得力はある。現地の女性も、戦争で人生を狂わされた人は相手国側にもたくだんいることを示唆する役割になっている。そして明らかになった兄弟三人の最後のシーンには目頭が熱くなった。
ちなみに事実を基にした物語ではあるが、トルコに墓参りに来たオーストラリア人がいた、というところだけが事実のようだ。
自分たちが直接侵略されたわけでもない異国の地で、子供を三人も失ってしまうなんてやりきれない。こんな話は今まで山ほどあるのに、これからも似たような思いをする人はたくさん出てきてしまうのだろう。悔やむのはいつもあとだ。本当に人間は歴史から学ばない生き物だなと虚ろな気持ちになる。最近は特にその傾向が強くなったような気さえする。やらなくても分かるようなことばかりやろうとしている。
スタッフ/キャスト
監督/出演 ラッセル・クロウ
脚本 アンドリュー・ナイト/アンドリュー・アナスタシオス
製作総指揮 ブレット・ラトナー
出演 オルガ・キュリレンコ/イルマズ・アルドアン/ジェイ・コートニー/イザベル・ルーカス/ジャクリーン・マッケンジー
