★★★★☆
あらすじ
妻と二人の娘と幸せに暮らし、出所したばかりの弟を気にかけている軍人の男は、任地のアフガニスタンでかろうじて生き延びていたにもかかわらず、戦死したと断定されてしまう。
デンマーク映画「ある愛の風景」のリメイク作品。
感想
戦死したと思っていた主人公が家族の元に戻って来る物語だ。当然家族は嬉しいに決まっているのだが、なんとか悲しみを乗り越えて新しい人生を踏み出そうとしていたところでもあり、主人公の弟とも良い関係が築かれつつあるところでもあったので再度仕切り直す必要があった。ただ消息不明だったのならまだしも、戦死と断定された後の出来事なので誰も責められない。
家族の元に戻って来た主人公は、戦地での過酷な体験によってPTSDを発症し、今までとは様子が変わってしまっていた。彼が戻ったから元通りの生活に、とはならなかった。不審な言動で妻を不安にさせ、娘たちを怯えさせてしまう。一家のぎこちない日々が過ぎていく。しかし不満が爆発した幼い娘に、帰ってこなければよかった、戦死すればよかった、と主人公が言われてしまうシーンは切なすぎた。
戸惑う家族の姿を見て思うのは、やはり戦争は馬鹿げているということだ。これらはすべて戦争が原因で起きている。彼らは極端な例だが、戦地から無事家族の元に戻った軍人たちの中にも、主人公と同様にPTSDを患い、家族や愛する者たちとの関係を悪化させてしまった者はたくさんいるはずだ。
平和のために戦って愛する者を傷つけるようになってしまうなんて全然笑えないジョークだ。元軍人の主人公の父親もベトナム戦争後に家族に酷いことをしたと告白をしている。戦争は負の連鎖を生む。戦争の重要性を語ればリアリストを気取れて気分が良いのかもしれないが、愚直に戦争の愚かさを訴えていくことも大事だろう。
主人公の問題に加えて、いつも兄と比べられてコンプレックスを抱えている弟や、そんな息子に不満を持つ父親といった家族の問題、そして主人公の妻と弟の微妙な関係なども描かれていく。重苦しさが漂う展開で、主人公の問題がラストであっさりと解決してしまったり、それ以外の問題が曖昧なまま有耶無耶にされてしまったりとやや雑な印象を受けるが、主演のトビー・マグワイアを始め、ジェイク・ギレンホール、ナタリー・ポートマンらメインのキャストたちの迫真の演技で魅せられてしまう映画だった。
スタッフ/キャスト
監督 ジム・シェリダン
脚本 デイヴィッド・ベニオフ
原作 ある愛の風景 (字幕版)
出演 トビー・マグワイア/ジェイク・ジレンホール/ナタリー・ポートマン/サム・シェパード/メア・ウィニンガム/ベイリー・マディソン/クリフトン・コリンズ・Jr/キャリー・マリガン
音楽 トーマス・ニューマン
マイ・ブラザー (2009年の映画) - Wikipedia
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