★★★★☆
あらすじ
カフェで働く若い女は、席で春画を見ていた怪しい客に、興味があるなら家に来るようにと名刺を渡される。
北香那、内野聖陽、柄本佑ら出演。塩田明彦監督。114分。
感想
春画にハマった若い女と研究者、「春画先生」との物語だ。楽しい感じで春画の面白さをふんわりと伝えるだけかと思っていたら、どんどんとディープな内容になっていった。
興味本位でやってきた主人公に、早い段階で「セックス」と言わせてしまうことで、その辺をぼやかさずにちゃんと描いていくよという宣言になっている。主人公は春画の魅力にのめり込んでいくとともに、性的に奔放になっていく。
そして、春画先生に思いを寄せるようにもなる。先生を好きになる生徒なんてベタすぎるが、内容が内容だけに、そもそもその気が全くなければ教えを請おうなどとは思わないのかもしれない。また編集者の男が言っていたように、内容が内容だけに、人の心をオープンにさせる何かがあるのだろう。
その後の彼らの奔放な行動は、春画が楽しまれていた大らかな時代の精神を体現しているかのようだ。そう考えると明治以降に輸入されたキリスト教的禁欲主義は、あまり影響がないように見えて、実は日本人の精神を大きく変えたのだなと痛感する。それによって規律ある社会や倫理観を手に入れたのかもしれないが、人生をつまらなくした側面もありそうだ。昔の外国映画を見ていて、クソ真面目だなと思うことがあるのは、たいていキリスト教の影響だったりする。
終盤の安達祐実演じる女の主導で繰り広げられる、主人公ら三人のムチを使ったシバき合いは、正直ワケが分からないが、愛の表現方法の多様性を見せつけられているようで、胸に迫るものがあった。
とぼけた感じでコミカルに描かれる物語だ。小津映画やウォン・カーウァイ映画のオマージュのような映像シーンもあって面白い。日本人が本来持っていたはずの精神が描かれており、こういうのこそが「日本を取り戻す」ことなのでは?と思ってしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原作 塩田明彦
出演 内野聖陽/北香那/柄本佑/白川和子/安達祐実/田山涼成
音楽 ゲイリー芦屋

