★★★★☆
あらすじ
大勢の人々でごった返すベースキャンプから、エベレスト登頂を目指して各チームが次々と出発していく。
事実を基にした作品。1996年に起きた大量遭難事故を描く。121分。
感想
エベレスト登山を目指す人々の姿が描かれる群像劇だ。序盤は登山会社のツアーのガイダンス的な内容になっていて、ガイドの仕事や訓練の様子が描写される。最高峰の登山なんて冒険家しかできないと思っていたが、今はこんな事になっているのかと興味深かった。年齢や体力など参加条件は当然厳しいのだろうが、巷にある体験ツアーとさして変わらない。
そしていざ登頂を目指して、各チームが出発していく。ここでは各参加者の面倒を見るガイドたちの大変さがひしひしと伝わってくる。隊列の前後を行きつ戻りつしつつ、全員を気にかけていて、参加者の何倍も体力と神経を消耗している。このツアーの費用を聞いた時は高いなと思ったが、これを見たら納得の金額だ。
途中でいくつもトラブルが発生しながらも、皆が次々と登頂を果たしていく。しかし体調や時間の問題で登頂を諦めるかどうかを決めるのは、本当に難しい判断だ。大金を払っている参加者もそれを受け取っているガイドも、多少のリスクを冒してでも登頂を成功させたいインセンティブが働いてしまう。
それも影響したのか、登頂後の下山で皆が次々と遭難していく。無理をして遭難してしまった人には多少は仕方がないと思える部分があるが、そうでない人たちも普通に遭難してしまうのは見ていて辛い。それぞれの事情など考慮するわけのない無慈悲な自然の容赦なさに震える。
この手の登山映画を見ると毎度のことで、劇中でも言及されているが、こんな危険を冒してまでなぜ登るのかとベタな疑問が浮かんでしまう。見たことのないものを見てみたいとか、触ったことのないものを触ってみたいとかと同じで、生き物の根源的な好奇心からくるものなのだろう。しかし誰かにとっては罰ゲームでも、誰かにとっては大金を払ってでもやりたいことになるのは不思議だ。
厳しい大自然の中で各ポイントで次々と人々が倒れていくさまは凄まじく、目が離せない。ただ終わってみれば救いのない話で、いったい何を描きたかったの?と思ってしまわなくもなかった。だが後で、これはエベレストの歴史に残るような大量遭難事件だったと知って腑に落ちた。
この物語は、何かメッセージがあるわけではなく、遭難事件そのものを描いている。これは事前に知っておいたほうがいいい情報だ。途中でいくつかある死亡フラグ立てまくりみたいなシーンも、知っていればそういうことなのだなと頷きながら見ることができる。
事件の壮絶さは伝わってくるが、物語としてはドラマが足りないような気がしてしまう映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/製作 バルタザール・コルマウクル
脚本 ウィリアム・ニコルソン/サイモン・ボーファイ
出演 ジェイソン・クラーク/ジョシュ・ブローリン/ジョン・ホークス/ロビン・ライト/エミリー・ワトソン/キーラ・ナイトレイ/サム・ワーシントン/ジェイク・ギレンホール/ジョン・ホークス/マイケル・ケリー/マーティン・ヘンダーソン/エリザベス・デビッキ/森尚子/ヴァネッサ・カービー/ミア・ゴス
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