★★★★☆
あらすじ
エヴェレスト登山隊にカメラマンとして参加していた男は、現地の街で消息を絶っていた有名な登山家の男を発見する。
タイトルの読みは「エヴェレスト 神々の山嶺(エヴェレスト かみがみのいただき)」。
感想
孤高の登山家を描いた物語だ。彼の周囲の人々たちの姿もバランスよく描かれており、山に魅了された冒険家たち、といった壮大なスケールの深みのある物語となっている。正直なところ、命をかけて敢えて困難な山登りをしたいなどとはこれっぽっちも思わないが、彼らにしか分からない何かがあるのだろうなと思わせる。その何かとは何なのか?という興味が、こういった冒険家たちの物語に惹きつけられる理由なのかもしれない。
世界最高峰の山エヴェレストが主な舞台となっている。その絶景が見られるだけでも満足感があるが、過酷な自然環境の中で阿部寛や岡田准一が、本当に本人なのか分からなくなるくらいの重装備で見せる迫真の演技は見ごたえがあった。
現地エヴェレストでのロケ撮影に加え、ヤマ場になると分かりやすく重厚な音楽が流れだす演出などは、昭和の大作映画ぽさがある。だが、役者陣がそれに見合うような演技でちゃんと応えているので、違和感なく見ることが出来た。
ただ、主人公が独白しながら山を登るシーンなど、一部でコントみたいに感じてしまう場面はあった。ずっと大まじめにやっているとどうしても可笑しみが出てきてしまうので、仕方ない部分はある。あらかじめちょっと笑えるシーンをいくつか用意しておけば、回避できたのかもしれない。
それから気になったのは、主人公のバックグラウンドがほとんど描かれなかったことだ。エヴェレスト登頂隊のカメラマンを務めるくらいだから登山家としてもかなりの実力があるらしい事はなんとなく窺えるが、もうちょっと彼の経歴などの詳しい情報も欲しかった。それに登山家はかなり入念な準備をして山に挑もうとしているのに、それなら俺も、と付いていく感じが軽くて、もしかしたら主人公のほうがすごいのでは?と思ってしまった。登山のカメラマンがどんな仕事をするのかも、事前に簡単な紹介があった方が良かったような気がする。
程よい重みがあって安定感のある展開だったが、終盤で冗長なシーンが増えてしまったのが残念だった。感動させたい、泣かせたい、と思う気持ちがそうさせてしまったのだろう。主人公が頂上付近で登山家と再会したシーンは悪くなかったのに、長々とやってしまったがために、このシーンが元々内包していた可笑しみが前面に出てきてしまった。阿部寛は銅像になっても見栄えがしそうだ。
ラストもそのうち「タロー!ジロー!」と叫び出すんじゃないかと心配してしまうほどたっぷりとした間があったが、全体としてはなかなか良く出来た映画だった。遭難死した登山家ジョージ・マロリーは果たして登頂に成功していたのか?という実際に存在するミステリーをうまく活かしたプロットも良く出来ている。
スタッフ/キャスト
監督 平山秀幸
出演 岡田准一/阿部寛/尾野真千子/山中崇/田中要次/ピエール瀧/甲本雅裕/風間俊介/佐々木蔵之介
音楽 加古隆
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