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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「グロースハッカー」 2013

グロースハッカー

★★★★☆

 

内容

 見込み客を集めるだけでなく、製品・サービスの開発からその後の成長までに関わっていく新しマーケティングのスタイル「グロース・ハック」について紹介する。

 

感想

 大々的な予算を使って有名人を招待して派手な発表会を行い、皆の注目を集め宣伝する、といったような旧来のマーケティングとは異なる、新しいマーケティングのスタイル。曖昧な雰囲気ではなく、目に見える数値をもとに試行錯誤を繰り返し、予算をかけずに製品やサービスを急成長させていく。その手法が、「Evernote」や「Spotify」といった(当時の)勢いのあるIT企業が行ってきた実例を挙げつつ紹介されている。

 

 ただし、本文は100ページに満たないボリュームなので、具体的なマニュアルではなく、どのように取り組むべきか、そのマインドセット(心構え)を身につけるための本となっている。それにおそらく、実際にどう行うかはその製品やサービスによって大きく変わるので、この本で紹介される実例をすべてやったところで必ずしもうまくいくとは限らないだろう。このマインドセットを身につけた上で、それをどう行うか、自分の頭で考えることが大事だ。これは決してIT分野に限った話ではなく、著者自ら実践して証明したように、本をベストセラーにするという旧来の商品にも通用する話だというのが勇気づけられる。また必ずしもデジタルツールを使うだけでもなく、時にはアナログな手法が有効なことだってある。

 

 従来式のマーケティングモデルの最も悪いところは、派手で大々的な立ち上げ神話だ。もう一つは、「(製品やサービスを)公開さえすれば、人は集まってくる」という、ウェブにかかわる人の多くが思い込んでいる幻想だ。


 アーロン・シュワルツが気づいたことを思い出してほしい。ユーザーは引き込まなければならない。いいアイデアだけでは不十分だ。実際、顧客は「獲得」するものだ。だが、その方法は絨毯攻撃ではなく、ふさわしい相手にターゲッティングしたピンポイント攻撃だ。

p54 

 

 まずは良い商品を作り、それを気に入るだろう人を呼び込んで彼らに宣伝してもらい、そこから得たフィードバックをもとに製品をよりよく仕上げていく、そのサイクルを繰り返すことで製品は市場のニーズにぴったりと合うものになっていく。それがほとんど費用をかけることなく誰にでもできるのだから面白い。

 

 本文の後の解説で、「クックパッド」や家計簿アプリ「Zaim」でどのようなグロースハックが行われているのかが具体的に紹介されていて、マインドセットだけでなく、実際にどう行うのかもイメージすることが出来る分かりやすい構成。ただ読んでいて思ったのは、解約する会員の数を減らすという目的でグロースハックを行なったら、最終的には解約画面が見つけ難くなってユーザーの使い勝手を悪くしただけ、という落とし穴にはまりこんだりしないか、という事。気づかないうちにそうなってしまうこともあるだろうが、分かった上で敢えてそうしている悪いサービスもありそうだ。あのサイトとか。

 

 

 それから時々、大々的にデザインを刷新するサービスなどもあるが、あれはグロースハックを一旦リセットするのか、それともハックの結果なのか、もしく別の技術的な理由によるものなのか、気になる。

 

著者

ライアン・ホリデイ

 

解説 加藤恭輔 

 

グロースハッカー

グロースハッカー

 

 

 

登場する作品

ブレア・ウィッチ・プロジェクト (字幕版)

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