★★★☆☆
内容
いまや巨大企業へと変貌を遂げたAirbnb(エアビーアンドビー)の創業から現在に至る物語。
感想
使っていない部屋や自分が不在のときに他人に部屋を貸す、というエアビーアンドビーのアイデアは、元々斬新で特別なアイデアだったわけでもなく、注目を集めたわけでもなかったというのが面白い。そもそも最初はうまくいかず、何度かサービスを立ち上げ直している。成功するにはアイデアだけではなく、運やタイミングも重要ということなのかもしれない。
そして同様のサービスを行うサイトは他にもあった。彼らが他から抜きんでることが出来たのは、創業者の3人のうちの2人が美大出身だったということがあるのかもしれない。彼らはウェブサイトとユーザーエクスペリエンスに次のようなこだわりを持っていた。
なめらかに動くこと。
簡単に使えること。
掲載物件が美しく見えること。
必ず3クリック以内で予約が完了すること。
p84
新しいサービスがたくさん登場している現代において、ユーザーが一瞬でも使用感に戸惑いや引っ掛かり、煩わしさを感じてしまうと、もう2度と相手にしてくれないかもしれないということに気付いていたのだろう。
やがてサービスは軌道に乗り急成長を始めるのだが、そんな彼らに立ちはだかるのが法規制の問題だ。これまでになかった規模で一般の人々が部屋を貸し借りするするようになると当然様々な問題が出てくるし、ホテルなどの既存のビジネスにも警戒感を持たれる。
仕方ないことなのかもしれないが、法規制と戦うために大規模な政治活動をする必要が生じるというのは、なかなかしんどいことではある。ただ結局自分たちのサービスが人々に支持されれば、自分たちの要求は通るはずだと楽観的に語っており、確かにその通りで、それが民主主義という事だなと、今更ながら改めて納得するものがあった。
そしてこのサービスの一番気になる点は安全性の問題だ。器物破損や暴行の事件が何件か起きているのだが、それに対する創業者の考え方がドライなのが少し引っかかった。事件が起きないような対策は充分に取るが、たくさんの人が他人に部屋を貸せば、一件くらいは何か事件が起きてもそれは不思議ではないことだ、という考え方。ただエアビアンドビーが取り立てて危険というわけではなく、安全のように思えるホテルの様な宿泊施設でだって、たくさんの事件が起きているという事実も念頭に置いておかなければならないが。
スタートアップが安定してくるとありがちなのが創業者同士のいざこざや分裂だが、今でも創業の三人がそれぞれ自分のやるべきことを確立してそれに邁進しているようだ。それぞれが互いを認め必要とする関係を維持出来ているのがすごい。創業者の一人がコンサルタントを雇って自身の評価を行い、その結果をもとにコーチを受け改善していった話は興味深かった。アメリカでは重役がこのようなことをするのは一般的なのだろうか。
彼らの理想は、ホストとゲスト間の人間味のある交流や普通の旅では味わえないような体験を提供することのようだが、個人的には多くの人にとっての最大の関心は安い料金だけのような気もしている。確かに人との交流を求める人はいるだろうが、規模が大きくなるということは、そうじゃない人が増えるということでもある。彼らの理想と人々の求めるものとの乖離が大きくなったときどうなるのか、気になる点ではある。
とはいえ、エアビーアンドビーのサービスに付随するようなサービス、鍵の受け渡しをスムーズに行うためのサービスや、近所のジムなどと連携させてホテルのような施設を提供するサービス等が関連のサービスが次々と生まれているようだ。最近は建築会社がAirBnBで部屋を貸し出しやすいような間取りの建物を設計するようにもなったりと、一つのサービスが少しずつ世の中の常識を変えつつあることを実感させられる。
著者
リー・ギャラガー
Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法
- 作者: リー・ギャラガー,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/05/25
- メディア: 単行本
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