★★★★☆
あらすじ
機長昇格を目指すパイロットは、急遽厳しい指導教官に代わったことに戸惑いながらも、試験を兼ねた羽田発ホノルル行き便の運航を開始する。103分。
感想
とある飛行機の運航の様子を描いた群像劇だ。よくある知られざる業界の裏側を描いたお仕事コメディなのかと思っていたのだが、実際は予期せぬ航空トラブルに対処する人びとの姿を描くサスペンス感あふれる物語だった。
あまりコメディ感はなく、予想していた客室乗務員役の綾瀬はるかのいつものコメディエンヌぶりもほぼ見られない。それどころか彼女は見せ場もないくらいだった。
笑える場面自体は少ないが、機内や空港の関係者がそれぞれの職務を懸命に果たす姿には心打たれるものがあり、見ごたえがある。やりつくされている航空業界の内幕ものなんて今さらやられてもと思っていたが、普通に全然面白かった。
中でも食べ物の恨みは怖いからと、乗務員たちが客の食事にとても気を使う姿は興味深かった。それから田畑智子演じるグランドスタッフの、縁の下の力持ち的な働きぶりは頼もしく、好感が持てた。
緊急事態発生による緊迫感もあり、ダレることなく集中力を保って物語は進行していく。こうなってくると「ハッピーフライト」という能天気なタイトルが不釣り合いに思えてくるが、かといって「新幹線大爆破」みたいなパニックものっぽいタイトルを付けるには地味すぎるトラブルなので悩ましい。だがそれでも、もうちょっと内容にふさわしいタイトルを付けた方が良かったような気がする。
気になったのは、落ち着いて緊急事態に対処していた彼女たちの心中だ。この職業を選んだ時点ですでに覚悟が出来ているものなのかもしれないが、実は客と同じように本心ではビビっていたりはしないのだろうか。あまりにも冷静沈着すぎて不自然だったので、もうちょっと掘り下げて欲しかった。
それから、横柄なモンスター客がなだめられはしたがモンスターのままで飛行機を後にしたのは精神衛生上あまり気持ちの良いものではなかった。とはいえこれが現実的な対応で、やり返して成敗みたいなことは出来るわけがないので仕方がない。嫌な世の中だ。こんな客が常連客だったりしたらゾッとしてしまう。
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見るまえに想像してたものとは全然違う内容だったが、充実した内容で楽しめた。いい余韻に浸れる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 矢口史靖
出演 田辺誠一/時任三郎
吹石一恵/寺島しのぶ/田畑智子/平岩紙/田山涼成/田中哲司/岸部一徳/小日向文世/中村靖日/森岡龍/長谷川朝晴/江口のりこ/笹野高史/正名僕蔵/竹中直人/ベンガル/木野花/森下能幸
音楽 ミッキー吉野
編集 宮島竜治