★★☆☆☆
あらすじ
明治初期に実業家として活躍した五代友厚の人生を描く。
三浦春馬主演、三浦翔平、西川貴教、森川葵ら出演。タイトルの読みは「天外者(てんがらもの)」。109分。
感想
五代友厚の人生を描く伝記映画だ。序盤は主人公の若き頃、幕末が描かれる。だが登場人物たちのステレオタイプ的な幕末キャラ演技がしんどい。坂本龍馬が典型的だが、常にカラ元気で無意味に豪快に笑いがちだ。
しかし逆に、この定番の坂本龍馬像は誰が元祖なのか、そして幕末時代劇の楽観的な雰囲気はどんな風に出来上がってきたのか、その歴史に興味が出てきた。武田鉄矢の何番煎じかの物まねを見ているかのようなツラさはあるのだが、別のやり方をしたらしたで「なんか違う!」と言われそうではある。
主人公が長崎海軍伝習所の一期生として学ぶところから物語は始まる。坂本龍馬らそうそうたる幕末の偉人と交流し、遊女と恋し、そして薩摩藩と日本のために働く若き青春の日々が描かれていく。ただセリフが聞き取りづらいこともあり、びっくりするくらいストーリーが頭に入って来ない。
おそらく流れ作業的にトピックを処理しているだけで、特にどのシーンにも力が入っていないからだろう。緩急もなく、なにも印象に残らない。物語もダイジェスト的で、背景や前後が全く見えない。実はある組織によってお蔵入りにされてしまった大河ドラマがあり、それをこっそり編集して2時間の映画にしたのがこれ、という陰謀論を唱えたくなる。
一人の人生を描くだけでも大変なのに、群像劇風に坂本龍馬らも描こうとするから話は取っ散らかり、登場してずいぶん経ってから、この人は伊藤博文だったのかとか、この女性が奥さんなのかとか、ようやく気付く始末だった。場違いな活劇風の音楽が突如流れるのも違和感がすごい。
やがて主人公が生涯を終えてエンディングを迎えるが、結局彼が何をやった人なのかはさっぱり分からない。主人公のすごいところが描かれたシーンなんて特になかったような気がする。「五代友厚は庶民の暮らしに恩恵を与えたが、彼らは気付いていない」的なナレーションがあったが、せめて2時間も付き合った観客くらいには気付かせて欲しかった。
また奥さんによる「あなたは天外者や」というドヤ顔の決めゼリフも、「天外者」って何?説明あった?と呆れてフフッと笑ってしまう。よく分からないシーンが続くシュールな展開に終盤はちょっと面白くなってきて、時々ケタケタと笑ってしまったりしていた。
嫌われ者だったらしい五代友厚だが、好きとか嫌いの感情すらわかないままに終わってしまう伝記映画だ。何をやった人なのか知りたい。
スタッフ/キャスト
監督 田中光敏
脚本 小松江里子
出演 三浦春馬/三浦翔平/西川貴教/森永悠希/森川葵/迫田孝也/宅間孝行/丸山智己/徳重聡/榎木孝明/筒井真理子/内田朝陽/八木優希/ロバート・アンダーソン/かたせ梨乃/蓮佛美沙子/六角慎司
登場する人物
五代友厚/坂本龍馬/岩崎弥太郎/伊藤博文/大久保利通/勝海舟/島津久光/島津斉彬/トーマス・グラバー/西郷隆盛

