★★★☆☆
あらすじ
島の人たちを集めて音楽フェスを開催しようとしていたミュージシャンの男は、島民を搾取する権力者に中止するよう圧力をかけられる。56分。
感想
小さな南の島を舞台にした物語だ。正方形に近い4:3のスクリーンサイズと昔のドキュメンタリーのようなざらついた質感の映像が何とも言えないいい味を出している。冒頭のアニメーションもそうだが、どこかおとぎ話めいた雰囲気のある物語となっている。
主人公は島のラジオで歌う、皆の人気者の歌手だ。演じるのはチャイルディッシュ・ガンビーノ名義で歌手としても活躍するドナルド・グローバーで、時おりミュージカル仕立てのシーンが挿入される。
自由と平和を愛する主人公は、搾取される島民たちに束の間の楽しい時間を提供しようとフェスを企画するも、その余韻で皆の仕事が滞ることを恐れた統治者に中止するよう脅されてしまう。ちょっとぐらいいいではないかと思ってしまうが、さすが強欲で非道な統治者だけのことはある。島のあちこちに彼の監視の目も光っている。
その少し前に、搾取の島を抜け出して自由の国アメリカへ渡る夢を語った同僚に、主人公がアメリカなんか行ってもここと変わらないよと語るシーンは印象的だった。この島で行われているような搾取を非人道的に見えないように、よりスマートにやっているのがアメリカだ、という強烈なメッセージだ。
そして途中からMVが話題となったチャイルディッシュ・ガンビーノ名義の「This Is America」を使ったミュージカルシーンとなる。ただ、これは映画ではなく視聴したAmazonプライムの問題だが、肝心の歌唱部分に字幕がなくて分かりづらかったのが残念だった。
圧力に屈することなくフェスを開催した主人公の姿には胸が熱くなったが、その後は冷酷な現実に打ちのめされることになる。結局、力には勝てないのかと寂しい気持ちになりかけたが、主人公の想いに応えた島民たちの行動には勇気づけられるものがあった。こんな行動がやがて世界を変えていくのだろう。
結果的には統治者の危惧通りになったわけだが、同じ結末なら最初からフェスを認め、翌日に休暇を与えるような寛大さを見せた方が彼にとっては得策だった、と言うのも皮肉が効いている。
それから、主人公の妻を歌手のリアーナが演じていて、彼女も何か歌うのかと期待していたのに、一曲も歌わなかったのはがっかりだった。
スタッフ/キャスト
監督/製作総指揮 ヒロ・ムライ
製作総指揮/原案/脚本 スティーブン・グローバー
製作/原案/出演 ドナルド・グローバー
出演 リアーナ/ノンソー・アノジー/レティーシャ・ライト