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「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」 2019

ヒキタさん! ご懐妊ですよ

★★★☆☆

 

あらすじ

 その気のなかった年の差夫婦が、ふとしたきっかけで子供を持つことを決意し、妊活を始める。

 

感想

 コミカルに爽やかに描いてはいるが、「妊活」がテーマなだけにやはりどこかに重苦しさがある。不妊は大抵どちらか片方に原因があるので、そのどちらか一方が責任を強く感じて落ち込むこともあるだろうし、子供を持つことに対する想いに温度差があって夫婦間に亀裂が入ることもある。それに単純に、互いに努力しているのにそれでも妊娠しないという辛い状況が続くわけだから、どうしたって重苦しくなってしまうのは仕方がないと言えるだろう。

 

 年の差夫婦が一つの目標に向かって互いに励まし合う姿が描かれて、心温まる良い物語だと思うのだが、夫婦が妻の両親に妊活開始を報告に行くシーンは、なんでそんなことをする必要があるのかがよく分からず意味不明で戸惑った。しかもその報告に対して父親は娘を厳しく叱るような態度。夫婦間の問題を報告したり、それにとやかく意見していることがグロテスクに感じて気持ち悪い。父親役の伊東四朗と娘役の北川景子の年齢差を考えると、てっきり父親も妊活で辛い思いをしたからという背景でもあるのだろうと思っていたが、単純に松重豊演じる娘婿がただただ嫌いなだけだった。この一連のくだりは何を意味していたのか訝しんでしまうが、妊活は周囲の人々のサポートが必要だ、とでも言いたかったのだろうか。

 

 

 それに意外とクリニックの医師がほとんど何の助言もしてくれなかったことも気になった。主人公が必死に健康な精子のために何をすればいいのか訊ねているのに、なにも答えずただ微笑を浮かべているだけ。その後主人公が自分でインターネットで調べて、アルコールやサウナ通いを止めたりしていたが、ザクロの写真を飾るとかの民間療法的なものは無理としても、せめて医学的根拠のあるアドバイスはしてやれよと思ってしまった。これは取り乱す主人公と冷静な医者という対比で笑わせようとしたのかもしれないが、医者に対する不信感が募ってしまった。

 

 そしてさらに言えば、主人公の妊活に対する情熱は、子供が欲しいというよりも、懐妊するというミッションを達成するためのもの、自分が子供を作れる人間であるということを証明するためのもの、という風に、手段が目的化してしまっているように感じられるのだが、子供を持つ理由なんて人それぞれなので、それはとやかく言うところではないのだろう。将来的に子供が欲しいと思っているカップルには、心構えとして不妊治療の実態を知っておくのに役に立ちそうな映画。なんだかんだで重苦しかった映画の最後は、せっかくなので赤ちゃんの顔を見せて終わって欲しいような気がしていたが、それはまた別の話、とでもいうように、潔く終わるエンディングは好感が持てた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 細川徹

 

原作 「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」 男45歳・不妊治療はじめました (光文社新書)


出演 松重豊/北川景子/皆川猿時/河野安郎/原田千枝子/山中崇/濱田岳/伊東四朗

 

「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」男45歳・不妊治療はじめました - Wikipedia

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