★★★★☆
あらすじ
イタリアでのミッション中に致命傷を負い、瀕死の状態で助けられた主人公は、小さな港町で療養生活を送る。
「イコライザ―」シリーズの第3作目で最終作。109分。
感想
イタリアでいつもの「人助け」を行なっていた最中に、主人公が致命傷を負うところから物語はスタートする。完全無欠の主人公にしてはえらく単純なミスだったが、善のために行う悪行がリミッターを越えたということなのだろう。これくらいの代償がないともはやバランスが取れない。
主人公は瀕死の状態で倒れていたところを通りすがりの人に助けられ、運び込まれた医者の家で療養生活を始める。そして体が回復した後は、そのイタリアの小さな町を散策し、住人たちと交流を深めるようになる。白壁の家が密集した小さな港町で、狭い路地を歩きながら出会う人々と気さくに声を掛け合う様子には異国情緒があった。こんな町でこんな風に暮らせたら幸せになれそうだ。
主人公も同じように考えるのだが、無理やり店からみかじめ料を取り、リゾート開発のために強引な地上げを目論むマフィアの存在が、町に暗い影を落としていることを知る。その土地を気に入って移住してみたら、そんな暗部があったと気づくのはわりとよくある話だ。
どこの国にもマフィアやギャングやヤクザといった反社会勢力がいるような気がするが、彼らのいない町は世界のどこかに存在するのだろうか。だがもしあったとしても、そこでは公の組織が反社会的勢力のような行為をしていそうだが。
今回の主人公のターゲットは、この街を脅かすマフィアだ。しばらくは様子見をするも、一旦動き始めたら躊躇することなく敵を倒していく。いつもは人目に付かないようにやるのだが、今回は割と早い段階で人前で正体を晒すのが印象的だ。
住民たちは、事情を察して瀕死だった主人公を通報することなく、詮索することもなくそっとしておいてくれた。だから彼ら対する信頼があったのだろう。仲間を殺されたマフィアが怒って町に押し寄せた時、主人公と共に住民が立ちふさがって追い返したシーンは胸が熱くなった。流れ者のガンマンと共に立ち上がった大衆といった趣で、まるで西部劇のようだった。
再度の襲来を予告して立ち去ったマフィアを、そのまま皆で迎え撃つ西部劇の王道パターンでも悪くなかったが、それを待たずに逆に主人公ひとりで敵地に乗り込む展開はクールだった。そしてクライマックスは派手に盛り上げるのではなく、静かに力強く、荘厳に執り行われる。まるで何かの儀式を見ているかのようで、ずしりと心に響く。
結局最後はアメリカに戻ったのかと思わせておいて、そうではなかったラストも心憎い。同じマインドを持った住人たちと、共に暮らしていくことにしたのだろう。彼がCIAのある職員に親身になっていた理由も最後に明らかにされ、じんわりと温かいものが心に流れた。シリーズを締めくくるにふさわしいエンディングだ。
スタッフ/キャスト
監督/製作 アントワーン・フークア
製作/出演 デンゼル・ワシントン
出演 ダコタ・ファニング/エウジェニオ・マストランドレア/デヴィッド・デンマン/メリッサ・レオ/ビル・プルマン*
*写真
音楽 マーセロ・ザーヴォス
関連する作品
前作