★★★★☆
あらすじ
金銭的余裕がないにも関わらず、長年勤めた工場から年金を貰えなくなった老人三人組は、銀行強盗を計画する。
1979年の映画「お達者コメディ/シルバー・ギャング」のリメイク作品。原題は「Going in style」。
感想
お金に困った老人三人組が銀行強盗をする話だ。長年真面目に働き、家族を立派に養ってきたのに、あてにしていた年金が貰えず、住んでいた家も追い出されそうになったなら、怒って何か一発逆転のデカいことをしてやろうと考えてしまうのも分からないではない。たとえ失敗して家を失ったとしても、刑務所で寝床と三食付きの暮らしは確保できるのだから、やらない手はないように思えてくる。
犯行を決意した三人は協力者を得て、さっそく入念な準備に取り掛かる。そもそも素人だし、俊敏には動けないしで四苦八苦する様子が面白おかしく描かれる。善良な一般市民が犯罪に手を染めようとするプロットは先日見た映画「モンスター上司」とよく似ていたが、協力者を探すくだりだったり、慣れないドラッグでハイになったりと展開に共通点が多くて興味深かった。このあたりはあるあるネタみたいなものなのだろう。
金銭的に苦しくなると、ギスギスしたりジメジメしたりしそうなものなのに、この三人は常に陽気で楽観的なのがいい。軽口をたたき、互いに鼓舞し合っている。歳を取ればそうなるのか、元々の気質なのかは分からないが、応援したくなる三人だ。家族や友人ら周囲の人々とのやりとりも微笑ましかった。
決行当日がやってきて、これが最後になるかもしれないと覚悟する主人公は、孫娘や義理の息子に想いを伝え、別れの言葉をかける。クライマックス前に用意された静かで熱い時間に気持ちが高まった。そしてついに始まった犯行は、多少の想定外がありながらも無事に成功し、その後の警察の厳しい追及もなんとかかわすことが出来た。程よい緊張感で見ごたえがある。
ちょっとうまく行きすぎの展開かなと思わなくはないが、真面目に生きてきた男たちが報われる善なる世界のファンタジーと見れば悪くない。他の登場人物たちにお年寄りをリスペクトする気持ちが感じられるのがいいし、老人たちもそんな社会に恩返しをしようとしているのもいい。こんな社会であれば、苦しくてもなんとかなるだろうと楽観的な気分になれそうだ。世代間で互いに罵り合うような社会ではキツい。
そしてこれは銀行強盗の物語というよりは、友情の物語と言った方がふさわしい。彼らの歳になっても、一緒につるんで何かできる友人がいるのは素敵なことだなと思わせられる。展開が粋で音楽のチョイスも良く、ほっこりと温かな気持ちになれる映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 ザック・ブラフ
脚本 セオドア・メルフィ
原案 「お達者コメディ/シルバー・ギャング(Going in Style [DVD])」
出演
マイケル・ケイン/アラン・アーキン/アン=マーグレット/ジョーイ・キング/マット・ディロン/クリストファー・ロイド/キーナン・トンプソン/シオバン・ファロン/ジョン・オーティス
音楽 ロブ・シモンセン
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