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「素っ裸の年令」 1959

素ッ裸の年令

★★★☆☆

 

あらすじ

 バイクを乗り回し、窃盗等をくり返す十代の非行少年たち。53分。

 

感想

 十代の少年犯罪グループの物語だ。主演は赤木圭一郎ということになっているが、実際は、彼が率いる不良集団に属する一人の少年が主人公だ。貧しい家庭に育ち、疎外感を抱えて社会に反発を覚えている。

 

 序盤は彼らがバイクを盗んで疾走するシーンが続く。昭和の古い街並みやだだっ広い郊外をバイクで駆け抜けていく様子は痛快で、かなり爽快感があった。バイクと背景映像を合成したシーンになると途端にちゃちになるのが残念だったが、バイクを走らせるシーンだけをずっと見ていたい気持ちもあった。

 

 

 暴走行為を行う彼らは、今では絶滅危惧種の暴走族の前身で、当時はカミナリ族と呼ばれていたらしい。しかしいつの時代もこうやってバイクで走り回りたがる人たちがいるのだなと妙に感心してしまった。しかもこれは日本に限ったことではないので、長いこと人間の相棒的存在だった馬に対する愛着が転化したものなのかもしれない。その一部が西部劇におけるならず者のように悪さをするようになるのだろう。

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 主人公は家庭が貧しいために同級生には馬鹿にされ、お金を稼ごうと新聞配達をすれば大人から冷たい仕打ちを受ける。それに反発して少し乱暴になってしまったら、新聞に大げさに書き立てられてしまう八方ふさがりの状態だ。ではどうしたらいいのだ?とグレてしまうのも分からなくはない。だが不良になればなったで、やっぱりあいつはそういう奴だったのだと世間は冷ややかな視線を浴びせてくるわけで、悪循環はどこまでも続く。そんな彼が、窃盗などで稼いだ金を貯めているのは高校に行きたいからだ、というのが切ない。

 

 不良グループは彼のような行き場のない男女の居場所として機能している。やっていることはともかく、稼いだ金は皆で分け合ったり、一緒に勉強したりと居心地の良いコミュニティにはなっている。だがそんな集団も、20歳を目前にして焦ったリーダーの身勝手な振る舞いによってあっさりと崩壊してしまったのは呆気なかった。組織を維持するためには、メンバー全員の不断の努力が必要だ。それを誰かが怠れば、簡単に終わりはやってきてしまう。

 

 結局何を描きたかったのだ?とか、主人公は中学生だがどの層をターゲットにした映画だったのだ?とか、実際に中学生はたくさん見に来たのか?とか色々疑問が湧いてしまうが、一時間未満の映画なのでこんなものだろう。

 

 それから、赤木圭一郎のその後を知っているだけに、初主演であるこの作品で彼演じる男が辿った末路には不吉な予言めいたものを感じてしまった。もちろん単なる偶然ではあるのだろうが。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 鈴木清順

 

出演 赤木圭一郎/藤巻三郎/初井言栄/左卜全

 

素ッ裸の年令

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  • 赤木圭一郎
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素っ裸の年令 - Wikipedia

 

 

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