★★★★☆
あらすじ
それぞれ上司に怒りを覚えている三人の男たちは、協力して彼らを消すことを計画する。
感想
それぞれモンスター上司を持つ三人の男たちが主人公のコメディ映画だ。彼らの上司はパワハラ、セクハラ、無能と種類は違うがどれもダメなやつで、比べようはないのだが強いて言うなら無能な上司が一番救いようがないだろうか。パワハラ、セクハラは駄目だと指摘されたら直せるような気がするが、無能はどうすることも出来ない。この無能上司を演じるコリン・ファレルは、その無能ぶりを楽しそうに演じていて面白かった。
それからパワハラ上司を持つ男は、祖母の死に目にも会えないくらい長時間労働を強いられていたが、アメリカでもブラック労働をするのだなと意外だった。ただ、昇進を約束されていたので、それに見合うだけの見返りがあると判断したからやっていたのだろう。仕事の内容と給料が釣り合っているかどうかを考えることもせず、ただ命令されたからやっているだけの日本のブラック企業の社員の場合とは全然違う。この男も労働環境に怒っているのではなく、約束通り昇進させてくれなかったことに怒っている。
憤りを見せる三人の姿に、上司に思い悩むのはどこの国でも同じなのだなとシンパシーを感じて微笑ましくなるが、それで殺してしまおうと考えるのは極端だ。失脚させるとか弱みを握って脅すとか、それ以前に色々思いつきそうなものだし、計画の途中でそういう方法に切り替えることも出来そうだったのに全然方針を変更しない。当然、人など殺したことのない善良な人間たちだから余裕などない。視野が狭くなって殺すことに囚われてしまい、それが目的化してしまったからだろう。上司を排除するという本来の目的を見失い、右往左往する彼らの姿は可笑しい。
そして、殺したいけどやっぱり殺すことなんてできないと躊躇する善良な三人だったが、勝手に好都合な状況が訪れる。ただそんな状況を作ったケヴィン・スペイシー演じるパワハラ上司の迷いのない行動が怖すぎてちょっと引いてしまった。しかもいつもの迫真の演技なものだから急にサスペンス感が出て、ここだけ空気が変わっていた。だが、こういう緊張感もコメディ映画には良いスパイスとなる。
たっぷりと間を使うことなく、テンポよく展開する物語で小気味がいい。多少、せわしなく騒々しい気がしないでもないが、間延びしてダレるよりは全然いいだろう。スベリ気味のシーンでも引きずることなく、さっさと次のシーンに行くのでダメージも少ない。大爆笑するほどではないが、ニヤニヤしながら見ることは出来るので、お気楽に楽しむには良い映画だ。
ところで三人のモンスター上司の中で、セクハラの女性上司だけがキワモノ程度の
扱いで軽く、部下の男がこぼす彼女に対する愚痴にだけ、皆が半笑いで聞いていたのは引っ掛かった。そんなリアクションを取ってしまう気持ちも分からないではないのだが、当人とすればもちろん深刻で、それにこれが男性上司と女性部下の場合だったら全然笑えない話のはずなので、男性のセクハラ被害を真剣に取り合ってもらえない辛さを実感してしまった。
スタッフ/キャスト
監督 セス・ゴードン
脚本/原案 マイケル・マーコウィッツ
脚本 ジョン・フランシス・デイリー/ジョナサン・ゴールドスタイン
製作 ブレット・ラトナー/ジェイ・スターン
出演 ジェイソン・ベイトマン/チャーリー・デイ/ジェイソン・サダイキス/ケヴィン・スペイシー/ジェニファー・アニストン/ドナルド・サザーランド/P・J・バーン/ヨアン・グリフィズ/ボブ・ニューハート/ジョン・フランシス・デイリー/メーガン・マークル
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