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「金子文子と朴烈」 2017

金子文子と朴烈(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 関東大震災直後に逮捕され、その後大逆罪で死刑を宣告されたアナーキストの朴烈と金子文子。事実を基にした物語。

朴烈事件 - Wikipedia

 

感想

 大逆罪で死刑宣告された朴烈と金子文子を描いた物語。二人の出会いから同棲生活、そして逮捕後の出来事が順に描かれていくのかと思っていたのだが、そのほとんどを逮捕後の様子を描くことにあてている。だからあまり二人の結びつきの強さがあまり伝わってこない部分がまずあった。ちなみに韓国映画だが、日本を舞台にしているので韓国語と日本語が同じくらいの頻度で使われている。ネイティブでない役者たちが使う中途半端な日本語が聞き取りづらくて時々しんどい場面はあったが、基本的には皆それなりに日本語を駆使できていた。

 

 関東大震災直後の政府や朝鮮人虐殺の様子も描かれるのだが、そこで展開される政府の論理が支離滅裂で意味がよく分からなかった。もともとのセリフがおかしいのか、日本語のセリフに直す時点でおかしくなったのか、それともそもそもの日本政府の論理が実際におかしかったのかは謎だが、論理的でない無茶苦茶な言い分にかなり冷めてしまった。ただその中心にいた水野錬太郎役のキム・インウの憎たらしさ全開のヒール役は良かった。

 

 

 様々な思惑が絡んで、朴烈らは大逆罪の首謀者へと仕立て上げられていく。ここで動じることなく毅然とした態度で取り調べに応じる朴烈と金子文子の態度には感心するのだが、そこで展開される彼らの言い分がこれまた支離滅裂だったのにはげんなりした。テロリストにだってテロリストの論理があって、普通は賛成できなくても言いたいことは分かるものだが、この映画では全然分からない。政府と彼らのどちらもがおかしなことを言っていることになって全然物語に身が入らず、中盤くらいからはかなり白けた気分で見守ることになってしまった。

 

 ところでアナーキストの彼らの言い分を聞いていたら、最近の皇室の結婚話を非難していた人たちとは気が合う部分があるかもな、と思ったりした。皇室に異常な関心を示している時点で、制度に賛成だろうが反対だろうが結局は似た者同士ということになるのかもしれない。

 

 最初は冷淡で横暴な態度を取っていた刑務官らが彼らに共感を示すようになったり、多くの支援者が現れるようになったり、信念を主張する演説会場のようになった裁判シーンなどは、心を動かすのに十分な展開だっただけに、それらの大元となる部分が駄目駄目だったのはかなり残念だった。

 

 それから金子文子を演じたチェ・ヒソは悪くなかったが、裁判中に騒ぐ傍聴人に対して「静かにしろ!」と一喝したシーンはコントみたいで笑ってしまった。彼女はコント顔をしていて、確かこんな女芸人がいてこんなコントをやってたよなと、映画を見ている間、ずっと気になってしまった

 

スタッフ/キャスト

監督 イ・ジュニク

 

出演 イ・ジェフン/チェ・ヒソ/金守珍/趙博/趙博

 

金子文子と朴烈 - Wikipedia

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登場する作品

金子文子が獄中で綴っていた手記

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関連する人物

朴烈/金子文子/水野錬太郎/布施辰治/牧野菊之助/内田康哉/山本権兵衛/田健治郎/平沼騏一郎/若槻礼次郎/江木翼

 

 

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