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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「アマデウス 」 1984

アマデウス(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 オーストリアの皇帝に仕える宮廷楽長のサリエリは、目の前に現れた天才モーツァルトに激しい嫉妬を覚える。アカデミー賞作品賞。

 

感想

 田舎出身で、すべてを犠牲にして音楽に打ち込み、オーストリア皇帝の宮廷楽長にまで昇りつめた男、実在したサリエリが主人公。彼は昔から噂を聞いて気になっていたモーツァルトを見に行って、想像とは違う高い声で笑う子供のような男だった事に落胆を覚える。勝手にイメージして勝手にがっかりしているわけだからモーツァルトにしたらはた迷惑な話だが、でもその気持ちはなんとなく分かる。この人はきっとこういう人に違いない、そうであってくれと人は勝手に望んでしまうものだ。

 

 何もかもを犠牲にしてすべてを音楽に捧げてきた主人公にとって、お金や女にだらしがなく、それでいて自分の地位や名誉を脅かそうとするモーツァルトは疎ましい存在だ。こんな奴に負けたくないと思ってしまうのは当然だろう。だがモーツァルトだって才能だけのただの自堕落な男ではなく、寝る間を惜しんで創作活動をしているし、次回作について熱心にプレゼンをしたり、タニマチ達に愛想よく振舞ったりと、音楽家としての仕事はしっかりとやっている。それ以外の面でだらしがなかったのは、彼もまた何かを犠牲にしてきたからかもしれない。

 

 

 モーツァルトの活躍を阻止しようと何かと邪魔をする主人公だが、実は彼が一番モーツァルトの才能を理解できる能力を持っているというのは、とても残酷だ。彼に目立ってほしくないと思いながらも、彼の新作をどこかで心待ちにしてしまっている。自分の中に相反する感情を抱えることになり、これでは神様を恨みたくなる気持ちも分からないでもない。それでもちゃんと相手の才能を認められるのは、彼もまた矜持のある芸術家であることを示していると言えるだろう。

 

 徐々にモーツァルトを追い込んでいく主人公だが、ひょんなことから彼の作曲を手伝うことになったシーンは見ごたえがあった。次々とアイデアが湧き出てくるモーツァルトと、それを必死に譜面に書き込む主人公。創作の過程を目の当たりにすることで、作品からとはまた違った角度からそのすごさを思い知らされている。そこで主人公が彼我の才能の違いに落胆するのではなく、それに立ち会えていることに興奮しているのが良い。なんだかんだいってもとてつもない才能に触れられるというのはすごい貴重な心躍る体験だ。

 

 2時間半以上ある作品で、ちょっとしんどく感じてしまう時もないわけではなかったが、それでも丁寧に描かれる主人公の複雑な心理や追い詰められていくモーツァルトの姿、それにいくつかあるオペラの上演シーンなどで見どころがたっぷりあり、堪能できる。しかしモーツァルトが35歳という若さで死んだことは知らなかったので、最期のシーンは意外性があった。この若さで死んだのに今も残る曲をたくさん作って名を残しているわけだから、彼はやっぱりすごい音楽家なのだなと、今さらながら再認識させられた。

 

スタッフ/キャスト

監督 ミロス・フォアマン

 

脚本    ピーター・シェーファー

 

原作 アマデウス

 

出演 F・マーリー・エイブラハム/トム・ハルス/エリザベス・ベリッジ/ジェフリー・ジョーンズ/ロイ・ドートリス/サイモン・キャロウ/クリスティーン・エバーソール/シンシア・ニクソン/ヴィンセント・スキャヴェリ/ケニー・ベイカー/ケネス・マクミラン

 

音楽    ジョン・ストラウス

 

アマデウス(字幕版)

アマデウス(字幕版)

  • F・マーリー・エイブラハム
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アマデウス (映画) - Wikipedia

 

 

登場する人物

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アントニオ・サリエリ/コンスタンツェ・モーツァルト/皇帝ヨーゼフ2世/ボンノ宮廷楽長/ファン・スヴィーテン男爵/レオポルト・モーツァルト/エマヌエル・シカネーダー/コロレード大司教

 

 

この作品が登場する作品

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