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「少林寺三十六房」 1978

少林寺三十六房(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 清の支配下で抵抗運動をしていた青年は、家族や仲間を殺され、強くなるために少林寺で修行することを誓う。115分。

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感想

 オープニングタイトルで主人公の披露する武術が、どこかファニーでありながらもカッコいい。作り物の滝や夕陽などセットはシンプルなのに、味がある。これは本物の武術家である主人公の凄みが表れているからだろう。

 

 清への抵抗運動で家族や友人を失った主人公が、強くなるために少林寺に入門し、三十五房で修業をしていく物語だ。反復の積み重ねの修行シーンは冗長になったりマンネリしたりしがちだが、時にコミカルに、テンポよく描かれていてそんなことは全くなかった。主人公の上達する様子がコンパクトに効果的に表現されていて見事だ。

 

 

 あまりにも巧みに演出されているので、もしかしてこのまま三十五房すべてでの修行シーンを一つずつ描いていくのかと不安になってしまうほどだった。だがもちろんそんなことはなかった。最初だけしっかり見せて、あとはこんな感じでクリアしていきましたと省略されている。

 

 主人公は最初はやる気だけの未熟の若者でしかなかったのに、修行を通していつの間にひとかどの人物といった佇まいに変貌を遂げた。最後の試練での三節棍を使った戦いも見応えがあった。

 

 ほぼ全編が修行シーンの修行映画と言っていいが、寺で行われているだけに、線香を供えたり鐘を鳴らしたり、洗濯したり食事をしたりと、仏事や修身生活に修行が紐づけられているのが興味深かった。日々の単調な生活に彩りを与えようと工夫した結果、もしかしたらこの拳法は生まれたのかもしれないなと思ったりした。

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 筋トレにハマっている人は、日常生活の何気ない動作の中に筋トレ要素を導入しようとしがちらしいが、それと似たようなものだろうか。でもそれって、仏事に集中しておらず雑念だらけということになるのでマズいような気がしないでもない。だが宗教にエンタメ要素は必要だ。お経にあえて節をつけ、唄うように唱えるのも、キリスト教に聖歌があったりするのも同じ理由だろう。楽しみがなければこんな生活やってられるかというのが本音なのかもしれない。

 

 修行を終えて故郷に戻った主人公は、そこで当初の目的を果たそうとする。だが戦うことは寺の精神に背くことなので、あまり本人が表に立たないようにしており、上手く配慮されている感じがあった。ラスボスとは直接戦うが、とどめを刺すところまでは見せず、別にそれはどうでもいいんですけどねとでも言うように、その後の寺に戻って主人公が修行を施しているシーンへとシレっと切り替えられる。

 

 タイトルでは三十六房なのに、実際にはなぜ三十五房しかないのだろう?と当初に抱いた疑問も解消され、スッキリとするエンディングだ。最後の地元での戦いにもう少し時間を割いても良かったような気もするが、つい真似したくなるようなワクワクする修行映画となっている。よく出来ている。

 

スタッフ/キャスト

監督 ラウ・カーリョン

 

出演 リュー・チャーフィー/ロー・リエ/ワン・ユー/ラウ・カーウィン/ユエン・シャオティエン

 

少林寺三十六房(字幕版)

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