★★★☆☆
あらすじ
唐の玄宗皇帝の息子に嫁入りするも、やがて義父である皇帝の妃となった女。
世界三大美女のひとり、楊貴妃の半生を描く。122分。
感想
楊貴妃の半生を描く物語だ。彼女のことはなんとなくは知っていたが、皇帝の息子と結婚しておきながら、後にその父親である皇帝の妃になったとは知らなかった。皇帝が横暴だったのかもしれないが、権力欲が強い女だと周囲に思われても仕方がない経緯ではある。
そんな彼女が皇帝の寵愛を受け、朝廷での権力を握っていく過程を描くのかと思ったら全く違った。皇帝とのロマンスが中心で、あとは周囲が勝手に権力争いをしている体でストーリーは進行していく。
定期的に情感たっぷりの音楽と映像で繰り広げられる恋愛シーンがあり、大河ドラマというよりはメロドラマといった方がしっくりとくる内容だ。ただ、時系列に沿ってメリハリなく出来事を羅列していくだけなので、メロドラマが大好物の人以外にはあまり面白みのない退屈な物語になっている。
最終的に皇帝と楊貴妃は、反乱によって追いつめられていく。権力欲がなく、ただ純粋に皇帝を愛しているだけの女として描かれる楊貴妃は、皆の不満のスケープゴートにされた被害者として、悲劇のヒロインのような扱いだ。
この終盤は、本来なら涙々の悲しくも美しい場面の連続になるはずだったが、彼女が開き直って言い訳しているだけの醜悪な女性にしか見えない。悪女でないことをアピールしているのに、逆に悪女ぽさが浮き彫りになっている。
親戚の宰相、楊国忠が殺されても何も感じていないようだし、私の何が悪いの?と平然と訴える様子には、なにも共感できなかった。悪意がないから余計にたちが悪くて、これなら自覚的に権力闘争でもしてくれた方が何万倍も清々しい。好きになれないタイプの悪女だ。
その他、夫や義母に義理立てして皇帝の愛を固辞するのかと思ったら案外あっさりと受け入れてしまったり、妻を取られた息子が戻って来て父である皇帝のために戦うとなったら、これはもう見事に反乱を鎮める流れだろうと思っていたのに、無残に破れてしまったりと、史実なのだろうが、何だよそれと肩透かしを食らう展開が多かったのもストレスがたまる要因となっている。
今なら名誉回復を企む楊貴妃側の情報操作、プロパガンダだろうと疑われしまいそうな映画だ。そして簡単に騙されるチョロい人が続出するのだろう。
スタッフ/キャスト
監督 チャン・イーモウ/ティエン・チュアンチュアン/シーチン
出演 ファン・ビンビン/レオン・ライ/ウーズン/ジョアン・チェン/ウー・ガン/ニン・チン
編集 ウィリアム・チャン
登場する人物
楊貴妃/玄宗/武恵妃/李瑁/高力士/梅妃