★★☆☆☆
あらすじ
父親の再婚により、義理の母とその連れ子が加わった家庭で暮らすことになった女子高生。
志田彩良主演、鈴鹿央士・井浦新らが出演。窪美澄の同名小説を今泉力哉監督が映画化。115分。
感想
父親の再婚による家庭環境の変化や、同級生との淡い恋を通して主人公の女子高生が成長していく姿が描かれる。
主人公をはじめ同級生たちは皆心優しく、控えめで穏やかだ。自分の感情を表に出すことはほとんどなく、常に相手を傷つけないように気を遣っている。最近はこういうタイプの映画やドラマが多く、実際の若者の姿を反映しているのかもしれないが、あまりにも感情が見えなささ過ぎる。
彼らがどう思っていて、何をしたいのかがさっぱり伝わって来なくて、物語に推進力が全くなかった。おかげでどのシーンも今何の時間?何待ち?状態となって停滞感がすごい。意図や目的が分からないものを見させられ続けるのは辛い。体感時間が異常に長くなる。
そのくせ、いざ喋り出すと妙に饒舌だ。何から何まですべてを説明してしまう。とてもアンバランスだ。そういうのは微妙な仕草や表情で表現し、セリフはそれを補うくらいでいい。それをやる余地はいくらでもあったのに、なにも伝わって来ない空虚なシーンばかりだった。
ところで、主人公が生き別れた実母の個展を訪れ、新しい夫と幸せな家庭を築いている姿を見てショックを受けるシーンがあるが、先日見た「宇宙でいちばん明るい屋根」(2020)でもほぼ同じシーンがあったので驚いた。どちらも原作小説があるのでそれに倣っただけなのだろうが、奇妙な偶然だった。
どこまで行ってもひたすら薄味で、お腹はタプタプになるが満足感は全くない映画だ。せめてダシくらいは効かせて欲しかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 今泉力哉
脚本 澤井香織
原作 「かそけきサンカヨウ」 「水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)」所収
出演 志田彩良/井浦新/鈴鹿央士/中井友望/鎌田らい樹/遠藤雄斗/石川恋/鈴木咲/海沼未羽/菊池亜希子/西田尚美/石田ひかり
音楽 ゲイリー芦屋


