★★☆☆☆
あらすじ
14歳の悩み多き少女は、不思議な老婆と出会う。
清原果那主演、桃井かおり、伊藤健太郎、吉岡秀隆など出演。監督は藤井直人、野中ともその同名小説が原作。115分。
感想
中学生の少女が謎の老婆と交流することで成長していく物語だ。だが最初の老婆と親交を結ぶ場面に説得力がない。主人公がどうして老婆に心惹かれたのかがさっぱり分からなかった。おかげでこの少女はなぜ事あるごとにヤバそうな老婆に会いに行くのだ?という疑問が常に浮かんで、物語に入っていけなかった。
さらに言えば、冒頭の主人公がラブレターを書くシーンからして、すでに不安になる危うさがあった。そもそも今時ラブレター?というのもあるが、少し書いては違う!と紙をくしゃくしゃに丸めて捨てる行為を短い時間に何度も繰り返し、そんな漫画みたいなことをやる?といきなり白けてしまった。
また話の進め方も不自然で、主人公の恋も家族との関係も元彼とのいざこざも、とても分かりづらい。事前にちゃんと情報をくれないままに進行するので、感情移入できずにただ眺めるだけになってしまう。
特に、入院したことを主人公が知っているのか分からない状態で、恋する相手の見舞いに行くかどうかで悩んでいる様子を描いたシーンは、そんなの伝わるわけがないだろうと意味が分からなさ過ぎて怖くなった。ちなみにこの恋する相手の姉弟愛も分かりづらい。映画のあちこちにそんな場面が散りばめられているので、心が萎えていく。
そして老婆が悩める主人公にかける言葉も、良いことを言っているようで大したことがない。ピンと来ないものばかりで心に響かなかった。そもそもこの主人公の悩みも、恋の悩みや妹が生まれる疎外感など、いつの時代にもある普遍的なものではあるが、その表現の仕方が何だか古臭い。現代の若者ならわざわざ謎の老婆に相談するまでもないのでは?と思ってしまうものばかりだった。
そう考えると、老婆なしで主人公ひとりで悩みを解決し成長する物語でよかったような気がしてきた。
もたもたしてテンポも悪い映画だが、唯一良かったのは映像だ。ちゃんとファンタジー感のある映像に仕上がっている。洒落た章立ての構成や音楽など、いい映画のたたずまいはしているので、深く考えずに雰囲気だけで見るのならいいのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 藤井道人
出演 清原果耶/伊藤健太郎/水野美紀/山中崇/醍醐虎汰朗/坂井真紀/桃井かおり/清水くるみ/笠松将
音楽 大間々昂
撮影 上野千蔵
