★★★★☆
あらすじ
毎日を退屈に過ごす女子高生の前に、死んだはずの伯母が現れる。
感想
冒頭からよくわからない展開で戸惑う。謎めいた台詞ばかりで困惑するのだが、なんとなくは物語が見えてくる。そして、そこかしこで笑わそうとしているのにも気づくのだが、序盤は笑えるのかどうかは判断保留したくなる感じがあった。
そして徐々に映画の世界観が分かり始めると、だんだん面白くなってきた。相変わらず意味がよく分からないことばかりなのだが、映画を拒絶したくなるというよりも、むしろその続きが気になってくる。意味深なセリフにも妙に引き込まれ、散りばめられた笑いも面白く感じ始めた。コミカルな場面の入れ方も、予定調和的ではなく意外性があって良い。
何しろ小泉今日子演じる女は、爆弾を作ってヤクザの事務所を爆破し、逮捕された後に失踪して死んだとされていたのに、でも生きていた、という無茶苦茶な設定だ。わけが分からなすぎて受け入れるしかないという気にもなる。そしてメインが小泉今日子と二階堂ふみだから、内容がなんであろうと二人の魅力で見ていられるという部分もあるかもしれない。
二階堂ふみ演じる女子高生は、どうせこんな人生を過ごすのだろうと人生を達観してしまい、そんなわかりきった人生をこれから生きるなんて、なんてつまらないのだろうと無常観に囚われている。そんな彼女に、いくらこの先の人生を想像した所で、その時点で想像したことでしかなく、その想像自体が過去のものとなり、この先何が起きるかは結局その時になってみないとわからないと、それとなく伝えるシーンは印象的だった。生きていれば想像もしていなかったことが起きる事もある。
そんなことをメインに伝えたかったのだろうと思うのだが、それ以外にも何気ないシーンで家族や姉妹、夫婦などの関係性を描いていて、意外と深みのある映画となっている。そんな家族の中では、女子高生の父親役を演じる板尾創路が独特の空気を醸し出していて面白かった。
風変わりな雰囲気を持ちながら途中でダレることもなく、最後までグイグイと引っ張っていく不思議な魅力のある物語だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 前田司郎
出演
二階堂ふみ/高良健吾/梅沢昌代/板尾創路/黒川芽以/山田裕貴/大竹まこと/斉木しげる/きたろう/相楽樹
音楽 岡田徹