★★★☆☆
あらすじ
映画監督を目指す青年は、古い白黒映画の中からやって来た女性と一緒に暮らすことになる。
感想
映画を愛する主人公の青年と映画の中からやってきた女性との恋模様。女性は、演じていた女優としてではなく、映画の中の役柄の女性がそのままやって来たという設定だ。白黒映画の世界からやって来たので、綾瀬はるか演じるヒロインは最初、白黒のままで、青白い肌がまるで死人のようでちょっと怖かった。オカルトぽさがある。
主人公はヒロインに夢中になり、もう誰も観なくなっていた古い出演映画を何度も観ていたくらいなのに、いざ現実世界に彼女がやって来たら、案外テンションが低くて拍子抜けしてしまった。もっと大げさに驚いたり喜んだりして欲しかった。現実のカラフルな世界に興奮して突飛な行動をとるヒロインに困惑し、その対応に追われるばかりだったので、最初から厄介ごとに巻き込まれたと思っているかのような印象だった。
ヒロインが現実世界にやって来た時の、何かおかしなことが起きても不思議ではないような雰囲気を作り出した演出は悪くなかったが、その前の映画の中のヒロインが観客席の主人公を見つめたりするメタ的な行動をとる演出は、もっと遊んでも良かったような気がする。ここでもっと笑いが取れただろうし、その後のヒロインの行動にも説得力が増したはずだ。
いわゆるツンデレの恋愛模様が描かれていく。だが出会った時の主人公のテンションがおかしかったので、途中で愛の告白が行われた時は、え、好きだったの?と軽く驚いてしまった。デート的なシーンも確かにあったが、放っておくとゴネられて面倒臭いので嫌々接待しているだけなのかと思った。ただ、綾瀬はるかが色々な局面でめちゃくちゃ良い表情をする。個人的にはあまり好きな感じではないのだが、観ていると段々と魅力的に見えてくるので、この人はなんだかんだで上手いなと感心する。
そして終盤になるにつれ、この恋物語は思っていたよりも長いスパンの物語だったことが分かってくる。触れ合うと消えてしまうというヒロインが、長い間触れられずにいた主人公に遂に触れる時がやって来る。このクライマックスは感動的な場面ではあるのだが、思っていたよりもなかなか彼女が消えなかったので、これだけの時間があれば何が(どこまで?)出来たのだろうと、よこしまな事を考えてしまっている自分がいた。
それから、患者の容態よりもその患者の書いた脚本の結末が気になってしまう看護師というのはどうなの?とも思ってしまった。でも患者にしてみれば、作家冥利に尽きる話だからそれはそれで喜ばしいことなのか。
スタッフ/キャスト
監督 武内英樹
脚本 宇山佳佑
出演
坂口健太郎/本田翼/北村一輝/中尾明慶/石橋杏奈/山本浩司/今野浩喜/山下容莉枝/西岡徳馬/竹中直人/酒井敏也/加藤剛