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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ザ・ヤクザ」 1974

ザ・ヤクザ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 密貿易でヤクザと揉め事を起こしてしまったマフィアの友人の依頼を受けて、事態収拾のため日本に向かった私立探偵の男。

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感想

 冒頭はヤクザのしきたりを紹介する意味もあって、ヤクザ同士が名を名乗って仁義を切るシーンからスタートする。ただ、変な間があり、今どき日本人ですら物珍しく感じてしまう状況でもあるので、実験的でアヴァンギャルドというか、前衛芸術的で奇妙な映像になってしまっていた。

 

 この映画でも全体的に、日本を題材にしたハリウッド映画にありがちな日本をミステリアスに描きたい気持ちが強すぎ問題が生じている。だが日本人が見せたい日本と、外国人が見たい日本は違うので、そこは神経質にならずにそれを楽しめるぐらいの余裕を持ちたいところだ。

 

 マフィアの友人に頼まれ、日本にやって来たロバート・ミッチャム演じる主人公が、かつての日本滞在時に知り合った男の力を借りて、ヤクザとのトラブルを解決しようとする物語だ。主人公がどんな男かちゃんと描かれないのが気になったが、高倉健と同じで、ロバート・ミッチャムが演じているから説明するまでもなくこういう男だという暗黙の了解があるのだろう。岸恵子演じる元恋人との再会やその兄である高倉健演じる男との絆など、情感たっぷりに描かれて惹きつけられる。

 

 

 あっさりと目的を果たすも、陰謀やしがらみに巻き込まれ、二人にそれぞれ倒すべき相手が現れるというプロットは上手かった。これで両者に見せ場が作れる。ただ共に案外あっさりと倒してしまって拍子抜けしてしまった。

 

 そして、倒した後に手下たちに囲まれた高倉健の方が断然見せ場は多かった。もはやいつもの任侠映画といった感じで、こなれた調子で次々と敵を倒していく。どうせなら背後に流れる音楽も、高倉健が歌う渋い昭和歌謡にしてくれた方がより気分が盛り上がったかもしれない。助太刀する主人公はまるで任侠映画に紛れ込んでしまった場違いな外国人みたいになっていた。

任侠(おとこ)の世界

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 映画の途中で、高倉健演じる兄と岸恵子演じる妹の兄妹に、実はさらに兄がいるという話を聞いた時は、二人きりの兄妹が助け合って戦後の苦しい時期を乗り越えてきたのだなと勝手に想像していたので、なんか思ってたのと違うと肩透かしを食らった気分だった。でもその裏には隠された秘密があったと知り、驚かされた。この秘密も日本ぽいと言えるかもしれない。

 

 それを踏まえての後日談は、時間が長めで少しダレたが、この映画で一番描きたかったのはおそらくこの場面だったのだろう。主人公の見せ場もここで訪れる。しかし小指で落とし前をつけるのは、登場人物のひとりも言っていたが、やっぱり気味が悪い。小指をもらったところでどうするの?と思ってしまうので、出来ることなら主人公にそれを否定してもらいたかった。だが意味不明のしきたりだろうがそれを尊重するのが主人公の仁義、という事だったのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作

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脚本 ポール・シュレイダー/ロバート・タウン

 

出演 ロバート・ミッチャム

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ブライアン・キース/ハーブ・エデルマン/リチャード・ジョーダン/岸恵子/岡田英次/ジェームス繁田/待田京介/汐路章/郷鍈治/植村謙二郎/ヒデ夕樹

 

ザ・ヤクザ (字幕版)

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ザ・ヤクザ - Wikipedia

 

 

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