★★☆☆☆
あらすじ
ラブドールの職人とそのモデルとして知り合い、夫婦となった男女の物語。
感想
主人公は、ヒロインがラブドールの型取りのモデルとして職場にやってきたことがきっかけとなり、付き合い始める。この二人の出会いのシーンは、裸のヒロインを前に主人公をオドオドさせて笑わそうとしているのだと思うが、そんなわけないだろうと逆にイライラしてしまった。主人公はまだ新人だからいいとして、そのベテランの師匠までがドギマギしているのが解せない。
産婦人科の医者と同じようなもので、普通に考えてただプロとして淡々と仕事をこなすだけだろう。恥ずかしげもなく振る舞うピエール瀧演じる会社社長のような態度が自然に見える。なんだか監督がシチュエーションに一人で興奮してしまっているだけのような気がしてしまった。まるで、話す前から笑ってしまい、客に面白さを伝えられずに白けさせてしまうお笑い芸人のようだ。まず自分の中でしっかりと消化が出来ていない。
やがて二人は結婚するも、次第にその仲は冷めていく。その理由が、夫が仕事に夢中ですれ違いが続いたから、というベタなもの。主人公は自分の仕事を偽っていた後ろめたさから理解を求めにくかったのかもしれないが、そもそも結婚しているのに自分の仕事を隠し通せるものだろうか。それにヒロインが主人公の浮気をどうやって見抜いたのかも謎だった。
そんな中でヒロインの病気が発覚する。死期を悟ったヒロインは自分の体をドールにして欲しいと頼むのだが、彼女が生きた証のようなものを残したいと考えるのは分かるとして、それを商品化すれば夫の役にも立つと考えているらしいことが意味不明だった。有名なグラビアモデルでもセクシー女優でもないただの一般人なのに、なんでモデルになれば売り上げに貢献できると思ったのだろうか。
その求めに主人公に応じてしまったのもよく分からない。元々、ビジネスになるか!と拒絶してもおかしくない話なのに、自分の妻をビジネスに利用するのか?という別の問題まで出てきてしまう。そこはビジネスとは別に、個人的なプロジェクトとして一人部屋に籠もって最高傑作を作ろうとした方が凄みが感じられたような気がする。急に仕事仲間が消えてひとりで製作するシーンが増え、そんな雰囲気を作り出そうとはしていたが、結局は仕事なんでしょ?と言いたくなってしまう自分がいた。
不可解な展開が連続したので、ドール完成後のおそらく一番泣かせたいクライマックスのシーンでは、ついつい失笑してしまった。病気についてもきれいに描き過ぎで、まるでステレオタイプの少女漫画的な映画となっている。男にして欲しい願望がすべて詰め込まれているかのようだ。自分が死んだ後に男にあんなこと言われたら最高だ、みたいな。そんなファンタジーを求めている人に向けて作った映画だということなら、別にそれはそれでありだ。楽しめる人は楽しめると思うが、特に自分から言うことはない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 タナダユキ
出演 高橋一生
浜野謙太/三浦透子/大倉孝二/ピエール瀧/渡辺えり/きたろう
音楽 世武裕子
編集 宮島竜治