★★★★☆
あらすじ
裏の稼業を持つバーテンダーの元に、黒いドレスを着た謎の女が現れる。
感想
主演とされる原田知世は、黒いドレスを着た謎の女役だ。ただ謎の女がいつまでたってもミステリアスだとにっちもさっちもいかないので、相手役のバーテンダーを演じる永島敏行が中心となって物語が進む。だから主演は永島敏行とした方がしっくりくる。ただ商業的には、原田知世主演とした方がしっくりくるという事なのだろう。
映画は裏稼業を持つバーテンダーがメインとなるハードボイルドな雰囲気の映画だ。この手の映画は、少し間違えるととんでもなくダサくなったり、とんでもなく笑える映画になってしまうものだが、この映画はミスすることなくハードボイルドな雰囲気を保っている。
さらにはその雰囲気のために重要な劇中曲に、日本人アーティストを使っているのがなかなかの挑戦だ。無難にあっちの小洒落た曲をかけておけばいいのにと心配してしまうが、この試みも成功している。ちゃんと探せばいつの時代だって、日本にはいいアーティストがいる、という事だ。
映画の途中で大金の受け渡しシーンがあるのだが、そこで使われるのもジュラルミンケースじゃなくてミカン箱だ。でも全然悪くない。単なる海外のコピーじゃなくて、日本的要素を入れようとする意気込みが感じられる。
そして、脇役として登場する成田三樹夫や室田日出男の演技が素晴らしい。わずかな出演時間で、印象に残る演技だ。しっかりと存在感を示している。さすが昭和の名脇役、といったところだ。
物語は原田知世演じる謎の女に、菅原文太演じるどこか達観した大物やくざも絡んで展開していく。この追われる二人は居場所がなくてあちこちに預けられるのだが、まるでたらい回しにされる孤児のように文句も言わず、殊勝な顔して従順に後をついていくのが可笑しかった。
謎の女だけに原田知世の活躍は少なく、主演としての彼女に期待していた人には物足りなさが残るかもしれないが、映画としては小粋で悪くない仕上がりだった。
スタッフ/キャスト
監督 崔洋一
製作 角川春樹
出演 原田知世/永島敏行/藤真利子/時任三郎/菅原文太/中村嘉葎雄/藤タカシ/成田三樹夫/橋爪功/室田日出男/菅田俊
音楽 佐久間正英