★★★☆☆
あらすじ
元ハスラーのマスターが営む喫茶店で住み込みで働く画家志望の青年は、小料理屋の女将と出会う。130分。
感想
道頓堀川周辺に暮らす人々の人間模様を描いた群像劇だ。「道頓堀」と言われてもピンと来ないが、繁華街なので夜の街で働く人々や賭けビリヤードなどで稼ぐ人など、世間からはみ出したアウトロー的な人々が多く住む街といったところだろうか。
そんな街に生きる人々の憩いの場となっている喫茶店で働くのが主人公だ。訪れる客たちとのエピソードが展開されるのかと思ったが、それはほぼ無くて、店のマスターとその息子、たまたま知り合った年上の女など、主人公の身近な人々のエピソードが中心となっている。
それぞれのエピソードは内容が薄く、心に響くことはほぼないのだが、随所にインパクトのある演出があって楽しめる。喫茶店でいきなり全裸で踊り出すダンサーやたった1ゲームでげっそりと痩せこけるハスラー、無駄に激しい交通事故など、どうした?何があった?といちいちツッコみたくなるシーンがいくつもあって面白い。
中でも全裸で踊るダンサーが股間を隠すため、真正面を向く時だけ毎度花を活けた大きな花瓶の前にわざわざ行くのが妙に可笑しかった。その律義さについ笑ってしまう。
主人公と年上の女のいかにも昭和な濡れ場も印象的だ。情感たっぷりに描かれるが、途中で一度中断することで、勢いだけのものからしっとりしたものへと変化する。互いの気持ちを再度確かめ合うような間が出来て、味わいのある演出だった。
主人公は友人の賭けビリヤードの付き添いをさせられたり、年上の女の逃げたペットの子犬を探す手伝いをさせられたりと、人の良さが伝わってくる。それがラストへの伏線となっていたのだろう。人は心優しいだけでは生きていくのは難しい。
人間模様よりも映像の力で魅せる映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 深作欣二
原作 道頓堀川
出演 松坂慶子/真田広之/山﨑努/加賀まりこ/大滝秀治/渡瀬恒彦/片桐竜次/成瀬正/名古屋章/カルーセル麻紀/浜村純