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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「メッセージ」 2016

メッセージ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 世界各地に謎の宇宙船が突如現れ、彼らの目的を探るために協力を求められた女性言語学者。原題は「Arrival」。

 

感想

 世界各地に謎の宇宙船が現れるもその目的が分からず、人類は不安な日々を過ごす。最初は各国で協力体制をとっていたのに、次第に疑心暗鬼に陥って皆が自分勝手な振る舞いをし出すのがリアルだった。昔の映画なら皆が一致団結して人類の危機に対処する美しい物語が展開されたのだろうが、そんなことは起きえないことにもう皆が気づいている。

 

 今回のコロナ禍にしたところで、世界が助け合い一丸となって困難に立ちむかった印象はゼロだし、国内だけで見たとしても、一つにまとまらず各自がそれぞれ自分勝手なことを言っているだけだった。これは人類が駄目だというよりも、単純にまともなリーダーシップを取れる人間がいなかった、というだけのことなのかもしれない。この映画でも各国をまとめるリーダー的存在は登場しなかった。

 

 

 そんな人間は100年に一人居ればいいくらいの稀なことなのだろう。それにリーダーがいない事よりも、無能なくせに自分にはリーダーシップがあると思い込んで、偉そうにしている人が多いことの方が問題を大きくしているのかもしれない。

 

 映画は人類対宇宙人の全面戦争に発展するような派手な展開とはならず、宇宙人と対話をくり返す主人公たちの姿が淡々と描かれていく静かな展開だ。地味と言ってもいい。盛り上がりそうな主人公と宇宙人のファーストコンタクトのシーンもあっさりと省略されていて、敢えて演出としてそうしているような印象だ。そして宇宙人たちよりも主人公の内面の変化にフォーカスが当てられている。

 

 体調が万全でなければ眠ってしまいそうな淡々としたペースが続くが、それだけにその中に仕組まれた前振りや伏線がつながり始め、物語に秘められていた真実が明らかになった時は、衝撃というよりも静かに驚きが体の中を駆け巡っていくような感覚で気持ち良かった。難解そうに見えて、言語によってものの考え方や見方が変わることがある、という事実をネタにしたシンプルなストーリーだ。現在と未来を行き来しながら問題を解決するクライマックスも盛り上がり、終盤にグッと面白くなった。

 

 全体のストーリーを理解した上でもう一度見るとまた新たな気づきが得られそうな、何度でも楽しめそうな映画だ。ただし休養十分、体調万全の集中力がある時に見た方がいいだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ

 

脚本/製作総指揮 エリック・ハイセラー

 

原作 あなたの人生の物語

 

出演 エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/フォレスト・ウィテカー/マイケル・スタールバーグ/マーク・オブライエン/ツィ・マー

 

音楽 ヨハン・ヨハンソン

 

撮影    ブラッドフォード・ヤング

 

メッセージ (字幕版)

メッセージ (字幕版)

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メッセージ (映画) - Wikipedia

 

 

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