★★★★☆
あらすじ
ボストン南部でギャングをする男は、同郷のFBI捜査官に情報提供者になるよう持ち掛けられ、その立場を利用して勢力を拡大していく。
事実を基にした物語。原題は「Black Mass」。
感想
主役のジョニー・デップの髪型がなかなか衝撃的だ。事実を基にした物語なのでモデルとなった本人に似せるためにしているらしい。敢えてそんなことしなくてもいいような気がするが、アメリカでの知名度的に寄せておかないとリアリティを失う恐れがあったのかもしれない。
主人公の最初の登場シーンで、観客を弄ぶようになかなか頭頂部を見せないカメラワークは笑えた。そして見慣れてくると、段々ちょんまげのサイドだけ残した髪型に見えてきて、映画の内容とも相まって時代劇ぽく感じる瞬間もあった。
ギャングの主人公と同郷のFBI捜査官、そして政治家である主人公の弟の三人が中心となって物語が展開していく。主人公と関わるのは職業柄マズいはずの二人が、意外と平気で一緒に食事したりしていることに驚くが、世間の監視がまだ緩い時代だったからだろうか。三人が交わることで彼らの運命は大きく変わっていく。
ただ、この中で一番悪いのはどう考えてもFBI捜査官の男だ。ルールなんか重要ではないと口にするシーンが何度もあり、そもそもコンプライアンスの意識がまるでなかった。主人公は彼が近づいてこようがどうしようが、どちらにしてもギャングとして普通に悪事をやっただろうし、弟に関しては弟というだけでとばっちりを食っただけだった。FBI捜査官の男が率先して色々やってしまったから、ことは大きくなってしまった。
ギャング同士の抗争の様子などはほとんど描かれず、主人公がどのように勢力を拡大し、どれぐらいの力を手に入れたのかは分かりづらい。ただ、身内であろうと容赦をしない主人公の凄みを見せることで、それが推し量れるようになっている。ジョニー・デップがそれに説得力を持たせる確かな演技を見せている。FBI捜査官の同僚を脅かすシーンなどは本当に怖かった。
それから部下に任せておけばいいのに自ら手を下すところなども偏執的なものを感じるが、そんな彼が息子と年老いた母親の死で落ち込んでしまうのは意外な気がした。ちゃんと人の心を持っていたと言えるのかもしれないが、もしかしたら、人の生き死にすら自分の思うがままにならないと気が済まない幼稚な身勝手さの表れだったのかもしれない。
クライマックスらしい場面を用意してもっと盛り上げて欲しかったが、それでも見応えのある作品だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 スコット・クーパー
原作 Black Mass: The True Story of an Unholy Alliance Between the FBI and the Irish Mob
製作総指揮 ブレット・ラトナー/ジェームズ・パッカー/ピーター・マルーク/レイ・マルーク/クリストファー・ウッドロウ/ブレット・グランスタッフ/ゲイリー・グランスタッフ/フィル・ハント/コンプトン・ロス
出演
ジョエル・エドガートン/ベネディクト・カンバーバッチ/ロリー・コクレーン/ケヴィン・ベーコン/ジェシー・プレモンス/コリー・ストール/ピーター・サースガード/ダコタ・ジョンソン/デヴィッド・ハーバー/ジュリアン・ニコルソン/アダム・スコット/ジュノー・テンプル/ビル・キャンプ/ジェレミー・ストロング*/ジェームズ・ルッソ*
*クレジットなし
音楽 ジャンキーXL
撮影 マサノブ・タカヤナギ
登場する人物
ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー