★★★★☆
あらすじ
世界の命運を握る機密情報を誰にも告げることなく死んでしまったCIA捜査官の記憶を移植された死刑囚。113分。
感想
善悪の判断がつかず凶悪な犯罪を繰り返した死刑囚が、幸せな家庭を持っていたCIA捜査官の記憶が移植されて変わっていく、というのが見どころの映画だ。
だが、その前の主人公の人間性のかけらもない傍若無人ぶりの行いがヤバくて、これをもっと見ていたかった感がある。他人が注文した料理を勝手に食べたり、欲しいものがあれば相手を殴って手に入れたり。そんな行いをする主人公に悪意や罪悪感が全く感じられないことに寒気を覚えた。そしてそんな人間に対して、周囲が怒るのではなく、呆然としてしまっているのもリアルだった。全く話が通じなさそうで、何をしても無駄のように感じてしまうのだろう。
そんな男が、時おり頭に浮かぶ他人の記憶に悩まされながらも、不意に出てくるCIA捜査官の能力を活用しながら、どこかに隠されたはずの大金を探す姿は、「ボーン」シリーズのジェイソン・ボーンのようで面白い。主人公にまだ凶悪な部分が少し残っているのもいいし、主要と思えた人物があっさりと退場するのも先が読めなくて良い。アクション映画として十分に楽しめる。
一方でCIA捜査官の家族との思い出がフラッシュバックする主人公とその家族との交流は、この映画の大事なシーンではあるのだが、こちらはウェットすぎるきらいがあった。そもそも奥さんにしたら、夫の脳を持っているとしても、姿かたちは全く違うおじさんが現れたら気味が悪いだけのような気がしてしまう。とはいえ、夫を失った直後だから何かにすがりたくなる気持ちは分からないではない。人の不幸に付け込むたちの悪い新興宗教のようでもある。
この家族との交流がラストにつながっていくのだが、でもあのエンディングの後、彼らはどうするのだろうと考えさせられる。一緒に暮らすのはさすがに違うだろうし、かといって定期的に交流を持つというのも、いつまでも過去を引きずっているようになってしまい、前向きに生きる邪魔になってしまう気がする。なかなか厄介な存在だ。
主演のケビン・コスナーをはじめ、トミー・リー・ジョーンズ、ゲイリー・オールドマンといった名優ぞろいの映画だ。その割には、迫真の演技合戦で火花を散らす迫力のあるシーンはないのだが、それでもそれぞれ普通に良い演技を見せている。それから細かい所だが、ケビン・コスナー演じる主人公が、記憶移植の手術の跡で、首の後ろに手術糸をぴろぴろとさせているのが妙にリアルで、気持ち悪くて良かった。
スタッフ/キャスト
監督 アリエル・ヴロメン
製作 マット・オトゥール/マーク・ギル/クリスタ・キャンベル/J・C・スピンク/ジェイク・ワイナー
製作総指揮 ボアズ・デヴィッドソン/ジョン・トンプソン/クリスティーン・オタール/アヴィ・ラーナー/トレヴァー・ショート/ラティ・グロブマン/ダグラス・アーバンスキー/ジェイソン・ブルーム/ケヴィン・キング=テンプルトン/サミュエル・ハディダ/ヴィクター・ハディダ
出演
ゲイリー・オールドマン/トミー・リー・ジョーンズ/アリス・イヴ/ガル・ガドット/マイケル・ピット/ライアン・レイノルズ /ジョルディ・モリャ/アンチュ・トラウェ/スコット・アドキンス/アマウリー・ノラスコ/ピアーズ・モーガン
クリミナル 2人の記憶を持つ男【吹替版】 | 映画 | 無料動画GYAO!