★★★★☆
あらすじ
殺人犯を逮捕した保安官は、その兄の一味に町を囲まれてしまう。
クェンティン・タランティーノ監督が名作の一つに挙げた作品。
感想
オープニングは、主役ぽい人たちが簡単に次々とやられてしまって、あれ?と思わせておいてからの反撃でスタート。この流れは上手い。つかみはOKといったところだ。
西部劇にありがちな、やたらドンパチするようなストーリーではなく、丁寧に物語を組み立てて盛り上げて行き、機が熟した頃に衝突が起きる。クライマックスに向けて段々とその波が大きくなっていくような構成。メリハリが効いていて飽きさせない。
保安官を中心としたグループは皆が個性豊か。ちゃんとそれぞれに見せ場があり、ドラマがある。リッキー・ネルソン演じる若者がちょっと完璧すぎる感じはしたが、その他の人物たちは皆人間味があるキャラクター。足の悪い頑固なおじいちゃんが、ベタではあるがいい味を出していた。
敵の一味に監視され、いつ攻撃を仕掛けられるか分からないような緊迫感のある展開の中で、何かと絡んでくる紅一点の女。やたら強気で身勝手な振る舞いで若干うざく感じていたのだが、この女性が映画理論用語「ホークス的女性像」の典型だそうだ。
確かに思い通りにならない女性が魅力的に感じられるのは理解できる。悲壮感さえある物語に、色っぽい話が加わってエンタメ感が出ている。終盤には、唐突に保安官の仲間たちが歌を歌い出して意外な感じがしたが、これもエンタメ感ということだろう。映画に幅が出ている。
ラストは敵一味との対決。自然と保安官の元に加勢する人が集まってくる展開は、無条件に胸が熱くなる。一進一退のギリギリの戦いではなくて、圧倒的な勝利になるのも良かった。これまでの緊迫感が一気に解放される。
しかし、アメリカは平気で保安官という公権力を倒そうとするからすごい。思い通りにならない相手は、公権力だろうが気にせず排除するという事だろうか。日本だと暴力団ですら警察が出てきた途端に皆慎重になるものだが。公権力に歯向かおうとするのはテロリストぐらいだろうか。現代を描いたアメリカ映画でも、追い詰められたギャングががんがん警察に発砲するシーンをよく見るが、こういうマインドを受け継いでいるのだろう。現実世界でもよくある事なのかは知らないが。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ハワード・ホークス
脚本 ジュールス・ファースマン/リイ・ブラケット
出演 ジョン・ウェイン/ディーン・マーティン/リッキー・ネルソン/アンジー・ディキンソン/ウォルター・ブレナン/ワード・ボンド
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