★★★★☆
あらすじ
山賊の男は、たまたま出会ったダイナマイト使いの革命家を唆し、銀行強盗を目論む。
英題は「Duck, You Sucker」。別英題に「A Fistful of Dynamite」。157分。
感想
山賊の男と革命家の友情を描く物語だ。二人が出会う前にまず描かれる冒頭の山賊による駅馬車襲撃は痛快だった。なんとか乗り込んだ駅馬車内で金持ち連中から散々侮辱された後、一家総動員で襲撃して一気に立場を逆転してしまう。カタルシスがあるし、この後に描かれることになる「革命」を示唆してもいる。
その直後、山賊は革命家と出会う。ダイナマイト使いの革命家を利用して銀行強盗を企む山賊が、逆に利用されていつの間にか革命運動に巻き込まれていくのが面白い。勝手に期待して付きまとっている間に、二人の間に奇妙な友情が生まれていく。
政府による圧政や武力制圧、処刑や虐殺の様子がじっくりと描かれており、抵抗運動の厳しい現実をまざまざと見せつけられる。それらを冷めた目で見つめる山賊が、革命とは字を読める連中が読めない連中を変化が必要だと煽ることから始まると指摘していたのは印象深かった。成功するにしろ、失敗するにしろ、多大な犠牲を払うのはいつも字の読めない者、貧しい者である庶民だ。
これは戦争と似ているが、革命は、成功すれば自由を手にしたり、字が読めるようになったりと、庶民自身が多くのものを得られる。だが、皆が字が読めるようになった今だと、運動を起こすこと自体が難しくなった。リーダーがいくら煽っても、自分だけがネットで真実を知ってしまったと思い込んでいる人たちが反発して、ひとつにまとまる事すらできない。
大衆がただ従うのではなく、それぞれが意見を言えるようになったのだから、それはより民主的でいいことなのだろう。だが、多くの人が今のままで構わないと思って来たから変わらなかったわけなので、これからも変わる可能性は低いままになる。今後は、多くの人が理解するまで待たなければならなくなるので、もっと時間がかかるようになるはずだ。なんせ専門家にマウントを取ろうとする素人が山のようにいる世の中だ。
骨太な展開ながらも堅苦しくはならず、二人の男の熱い友情ドラマとなっている。今見るとテンポが遅く、2時間半以上ある上映時間が少々つらく感じてしまうのは否めないが、そのゆったりとしたシーンの中には映画的雰囲気が満ちている。各エピソードは面白く、ダイナマイトを使った爆破シーンは激しく、どれも見ごたえがある。
革命家の過去と絡めたラストシーンは意味深だった。いろいろ想像してしまう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
出演 ロッド・スタイガー
ロモロ・ヴァリ
音楽 エンニオ・モリコーネ