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「狂犬の眼」 2018

凶犬の眼 「孤狼の血」シリーズ (角川文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 左遷され田舎の駐在所に勤務していた主人公は、所轄の工事現場に敵対する組織のトップを殺害したとされる手配中のヤクザが潜んでいる事を知る。「孤狼の血」シリーズの2作目。

 

感想

 前作から時間が経過し、警察官である主人公は左遷され、田舎の駐在所勤務となっている。いかにも田舎にありがちな村人たちが村の有力者を気にする様子や、新参者の主人公をどんな人間か見極めようと観察する様子が描かれている。

 

 村人に気を使う主人公が延々と描かれていくのかと思ったがそんなわけもなく、指名手配されて逃亡中のヤクザが地域の工事現場に潜伏することになって物語は始まる。ただ、前作のような抗争中の暴力団の間をのらりくらりとうまく立ち回る緊迫感みたいなものはなく、この逃亡中のヤクザとの関係が中心となって描かれる。

 

 

 全面戦争となりかけている抗争がこのまま大きくなっていくのか、終焉に向かっていくのか、見極めようとする主人公。しかし、結局ヤクザの世界も相手を壊滅状態に追い込む事はまずなくて、良き所で手打ちをするのがほとんどの結末だ。彼らもつまりは平和を望んでいるということか。

 

 ヤクザの世界では、このさじ加減が上手い人間が上に行けるのかもしれない。ただ強いだけでは駄目で、有利な手打ちの条件を引き出せる状況を作って抗争を終わらせられる人間だ。ここで個人的感情や義侠心で抑えが利かなくなってしまう人間は、味方にすら爪弾きにされてしまう。

 

 そんな中で警察の役目は、両陣営の戦いを見守る審判みたいなものか。民間人に被害が及んだり、近隣住民が怯えるような出来事は反則として取り締まる。とはいえ主人公のように審判が肩入れしたり、賄賂をもらったりすることもある。だからヤクザは審判を味方に引き入れることも重要となる。

 

 主人公はさすがに一人のヤクザに肩入れし過ぎな感はあるが、そのヤクザはそうなってしまうのも分からなくはない義侠心を感じる男だった。今回はこのヤクザの生きざまを描いた物語となっている。クライマックスは立てこもり事件となるが、その原因となった人物は誰かが読めてしまってちょっと冷めた。冒頭の良く分からない刑務所での面会シーンが、後半に効いてくる構成は上手い。

 

著者

柚月裕子

 

孤狼の血 - Wikipedia

 

 

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