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「ポップ1280」 1964

ポップ1280 (扶桑社ミステリー) 

★★★☆☆

 

あらすじ

 ポッツ郡で保安官を務める男は、自身の女性問題に苦慮している。

 

感想

 序盤は主人公のキャラクターがつかめず混乱した。ものすごく優秀な保安官かと思っていたら、自分のことを優秀と思い込んでいるだけの無能にも見えてきて、やがては敢えて無能を装った有能なのかもと思い直したりして、主人公に対する評価が二転三転する。

 

 そんな主人公が、意図的なのか偶然なのか、町の人々を何度も手玉に取る。中でも次期保安官選挙の対立候補を貶める方法はなかなか見事だった。影響力のある人物に相手候補に悪い噂がある事だけを仄めかし、それ以上の情報は出さずに放っておく。そうすると、気になったその人物はいろんな人に真相を尋ね回るようになるので、どんどんと噂話に尾ひれがつき、やがては本当に悪い噂が立つようになる。大した苦労をすることなく、勝手に対立候補の悪評を流布させてしまった。相手の期待に応えようと、話を大げさに盛りたくなる人間の心理をうまく利用している。

 

 

 それから主人公は、妻以外に愛人と元婚約者の二人とも付き合っており、この女性問題の解決も図っている。しかし、そもそもなんでこんなに主人公がモテるのか、よく分からない。女性に対して情けない言動をしたりもしていたので、最初は女には困ったことがないという主人公の話は、ただホラを吹いているだけなのかと思ってしまった。

 

 主人公はこの問題を謀略や悪事を積み重ねることで解決していく。その過程で平気で人殺しもしているのだから間違いなく悪人なのだが、差別や偏見に拒否反応を示したり、間抜けな奴を策略にハメてもとどめは刺さなかったり、女を弄ぶくせに二人で交わした約束は必ず守ろうとしたりと、どこか主人公には真面目で誠実な一面もある。相変わらずキャラクターが定まらない感じがあって戸惑ってしまうが、これらの状況から考えると、主人公は知能の高いサイコパスと見なすのが適当なのだろう。

 

人間は、大きな問題に簡単な答えをみつけたがるものだ。自分たちに起こる、よくないことを、全部ユダヤ人や黒人(カラード)のせいにしようとする連中がいる。こんなに広い世界では、うまくいかないことが山ほどあってもなんの不思議もないということが、わからない連中がいるのだ。

p57

 

 ただ、神の存在に言及したり、人間の本性に関する鋭い考察を随所で行っていたりと、単純なサイコサスペンスとは言い切れない、深みが感じられる小説となっている。読みこめば色々な発見があり、様々な解釈が出来そうだ。なぜか主人公がモテるのも、彼が神様的な存在だからなのかもしれないと思ったりもした。

 

著者

ジム・トンプスン

 

 

 

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