★★★☆☆
あらすじ
プルトニウムが積まれた輸送船が乗っ取られ脅迫される日本政府。事態打開のために特殊部隊が動き出す。テレビドラマの劇場版。
感想
ドラマを見ていないので、登場人物たちの情報や関係といった細かい部分はよく分からないのだが、その点はなんとなく推し量れるようにはなっている。そして登場人物たちが多いせいか、あまり向井理に主役感はない。彼を中心とした群像劇と考えるべきなのか。なんかよく分からないが良く戦っているな、くらいの印象。目立ってはいない。
そんな主人公の代わりに圧倒的な存在感を放つのが、背後で流れ続ける大げさな音楽。もうセリフがなくても、音楽だけで状況がすべてわかってしまうのではないかと思ってしまうくらいだ。分かりやすさという意味ではいいのかもしれないが、「今映画観てるのでちょっと静かにしてもらえませんか?」と懇願したくなるくらい騒々しい。時にはフライングして映像に先行して音楽が流れてきたりして、思わず失笑してしまう場面もあった。ただ終盤は音楽を控えるシーンもあったので、やたらに壮大な音楽を流しておけばいいと思っているわけではなさそうなので、なんでこんな使い方をするのかが不思議だ。
プルトニウムを積んだ船を乗っ取ったテロリストに日本政府が脅迫されるという展開の映画。今のコロナ対応を見ても分かるように、個人的に日本の政府が責任を持った対応なんて出来るわけがないと思っているので、映画でそんな描写があるとリアリティを感じられず冷めてしまうのだが、この映画はその点、意外と良かった。きっと製作者の意図としては普通に責任感のある立派な政府を描いているつもりなのだろうが、実際にはそうはなっていないところが良い。
誰が最終責任者か曖昧だし、勝手に行動する人間がいるし、国家の危機というのに特殊班同士で縄張り争いのいがみ合いをしているしで、全体的にガバナンスが効いていない感じ。だけど本人たちは全然ダメだと思っていなくてしっかり対応していると思っている感じ。そもそも製作者がまともに機能する政府とはどんなものなのかをよく分かっていない感じが日本らしくて良い。
ところで途中で政府が、テロリストに身代金として確か30億円を支払っているのだが、現実世界で「アベノマスクに500億円超」を体験してしまった今だと「安いな」と感じてしまって困った。劇中では、テロリストに30億円ものバカげた金額を払うのか、という雰囲気だったが、そんな金額で済むのなら全然いいんじゃない?とか思ってしまっている自分がいた。そう考えると、今後の日本映画は「アベノマスク500億円超」という重い十字架を背負っていくという事になるのだなと感慨深い。映画で出てくる金額はすべてアベノマスク何回分かで判断されることになる。となると「バカげた金額」「膨大な予算」等というのは一体いくらにすればいいのか設定が難しそうだ。
皆が大義を主張し、無駄に話がでかいような気がする映画。劇中の誰かが言っていたが、そんな事よりまず地道に一歩一歩やっていくことが大事なのでは?と思ってしまうが、テレビドラマから見ていれば必然の展開なのかもしれない。終盤が冗長に感じてしまうのもドラマから見ていないからだろう。
あまり深く考えずになんとなく観る分にはなんとなく楽しめる映画。真面目に深く考えてしまうと、本編よりもまず、プルトニウムを積んだ船を簡単に乗っ取られてしまったという大問題について考察しなければいけなくなってしまうはずだ。
スタッフ/キャスト
監督 平野俊一
出演 向井理/綾野剛/新垣結衣/吹石一恵/青木崇高/池内博之/平山浩行/本宮泰風/ふせえり/平岩紙/本田博太郎/朝加真由美/土屋アンナ/辰巳琢郎/髙嶋政宏/近藤正臣/オダギリジョー/大森南朋
音楽 髙見優/木村秀彬
S-最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE | 映画 | 無料動画GYAO!