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「散歩する侵略者」 2017

散歩する侵略者

★★★★☆

 

あらすじ

 行方不明になっていた夫が保護されるも、別人のようになっていて戸惑う妻。

 

感想

 夫が別人のようになって不可思議な言動をするようになり、しまいには宇宙人に乗っ取られたと言い出して困惑する妻。しかしこの夫、挙動不審でとぼけた言動を繰り返すという、まるでふざけているかのようなおかしな人の役を、松田龍平が好演している。他の人がやったらここまで説得力があったかなと思うようなハマり役だ。彼のキャラクターなしには成立しなかったのではないだろうか。

 

 夫は地球を侵略するためにやって来た宇宙人に乗っ取られており、地球の事を知るために様々な人間の「概念」を学ぼうとしている。彼らが「概念」を学ぶと、それを教えた地球人はその「概念」を失ってしまうという設定が面白い。宇宙人たちが「「家族」って何?自分の言葉で説明してよ」などと問い詰める姿は、同じ監督の映画「CURE」の催眠術を思い起こさせたが、急に影を強くしたりして相変わらず人を不安にさせる演出が施されている。

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 そして「概念」を失って、逆に解き放たれたように生き生きとし始める人が多いのも興味深い。どれだけ人々が概念というものに縛られて生きているかの証拠にも感じられる。その一方で、概念を再度手に入れることで不仲だった夫婦がいい感じになっていくという対照的な描写もある。人は概念に縛られ過ぎるのはよくないが、概念によって幸せを感じられるようにも出来ていると言えるのかもしれない。人間はややこしい生き物だ。

 

 宇宙人に地球を侵略されそうになっているというのに悲壮感はほとんどなく、どこかユーモラスな雰囲気が漂っているのが印象的な映画だ。「概念」を失って生き生きしだす人もそうだし、宇宙人の人間味のない言動もコミカルだ。背後で流れる古典的な雰囲気の音楽も、どこかのどかな古いSF映画ぽい雰囲気がある。そんな中でも長澤まさみ演じる妻が、自分は宇宙人だ、と言い出す夫に対して「はいはい、わかったわかった」と受け流し、もうすぐ地球は侵略されると言われても「えーそうなのー?せっかくいい感じになって来たのにー」くらいの軽いリアクションだったのが面白かった。サバサバしているというか、あっけらからんとしているというか。もしかしたら、これこそが唯一宇宙人に対抗できるものなのかも、と思ってしまうような強さがあった。

 

 

 最後は、愛が地球を救うという案外ベタな結末が待ち受けていた。途中で宇宙人たちが「ダサい」「ダサい」と連呼していたのが気になったが、他人が作ったものには愛着が持てない、愛を知らない、という事を示していたのだろうか。色々と深読みしたくなる不思議な雰囲気を持った映画で面白かった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 黒沢清

 

出演 長澤まさみ/松田龍平/高杉真宙/恒松祐里/前田敦子/満島真之介/児嶋一哉/光石研/東出昌大/笹野高史/長谷川博己

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散歩する侵略者

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  • 長澤まさみ
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