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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「CURE」 1997

CURE

★★★★☆

 

あらすじ

 精神を病んだ妻を抱える刑事は、頻発する犯人は別だが手口は共通の殺人事件の謎を追う。

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感想

 次々と起こる殺人事件。犯人は皆すぐに逮捕されて罪を認めるのだが、なぜかどの事件も同じように異常な手口で行われている。このことを不審に思った役所広司演じる刑事がその謎を追うというストーリーだ。まずそれぞれの殺人事件がどこかコミカルで、笑ってしまうほどではないにせよ、可笑しみがある。つまりはそこには普通じゃない、奇妙な点があるということを表しているのだろう。事件が起こるたびに少しずつ殺人事件の全容が明らかになり、その奇妙な理由が判明していく。

 

 観ているうちに気付くのは映画全体に不穏な空気が漂っている事だ。背後では常に不協和音が流れ、終始落ち着かない気分にさせられる。そんな雰囲気の醸成に効果的な役割を担っているのは、病院や交番、関係者の住居など舞台となる場所の絶妙の寂れ具合だろう。どこも時代に取り残されてしまったような古ぼけた場所で、家具などの配置もどこか不自然だ。そして、そこにいる人たちも皆表情に明るさがなく、場所同様に沈んだ顔をしている。なんだか観ているこちらまで段々と気が滅入ってくるようだ。

 

 

 やがて事件は萩原聖人演じる謎の男が関与していることが明らかになる。彼の気怠く執拗に相手に問いかけ続ける姿には、イラつきを覚えつつも次第に引き込まれていくような磁力があった。当初はこの男と刑事が対決する構図で進行していたが、次第にその雲行きは怪しくなっていく。男と対峙する中で、心を病んだ妻と暮らす刑事は、その心の闇を吐露するようになる。

 

 そしてラストに待っていたのは最初に予想もしていなかった結末だった。中盤のファミレスのシーンでは食事をほぼ食べ残し、暗い表情のままでいた刑事が、エンディングになると全て平らげ、まるで奪うかのように食後のコーヒーを受取る変わりよう。その間に起きたことを考えると、その快活さが途轍もなく怖い。

 

 正直、観ている間はよく分からない部分も多かったのだが、後から反芻すると色々と気づいてきて、うすら寒い気持ちに襲われる。中盤に刑事が幻覚で見た妻の姿、あれは恐れというよりも願望だったのか、と気づいてハッとしたり。見るたびに新たな気付きが得られそうな映画だ。そして漠然とした怖さがその度に確信に変わっていく。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 黒沢清

 

出演

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萩原聖人/うじきつよし/中川安奈/洞口依子/戸田昌宏/でんでん/螢雪次朗/大杉漣/諏訪太朗/田中哲司

 

CURE

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  • 役所広司
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CURE (映画) - Wikipedia

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登場する作品

青髭―愛する女性(ひと)を殺すとは?

 

 

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